【野球】元Gドラ1右腕、打撃投手に悪戦苦闘 今季から古巣に復帰

 思うようにストライクが入らない。ドラ1右腕が、“第2の人生”で悪戦苦闘している。「スピードも一定でなければいけないし、ずっとストライクを投げなければいけないし…」。苦笑しながら悩みを漏らすのは、今季から古巣の巨人で2軍の打撃投手を務める真田裕貴氏(32)だ。

 2001年ドラフト1位で巨人に入り、高卒1年目から6勝。2年目以降は肩の故障もあって伸び悩んだが、08年に移籍した横浜(現DeNA)で復活した。貴重な中継ぎとして、09年からは3年連続で50試合以上に登板。台湾や独立リーグも含めて、計6球団でプレーした。

 現役生活に区切りをつけた昨年、巨人から受けた打撃投手としてのオファー。「野球に携われるのは本当に幸せなこと。ジャイアンツに声をかけていただき、戻って来られた」。世話になった高橋監督、阿部、内海らもいるチームに恩返しをしようと裏方への転身を決めたが、すぐに壁にぶち当たった。

 宮崎キャンプ前から準備は積んできた。川崎市のジャイアンツ球場を連日訪れ、選手の自主トレをサポートした。ただ、フリー打撃ではストライクが全く入らず、自ら他の打撃投手に交代を要請することもあった。

 現役時代はシュートで内角をえぐる強気な投球が持ち味。だが、「打たせる」ことが仕事の打撃投手はそうはいかない。「一番は距離感ですね。18・44メートル(投手から捕手までの距離)だったのが、約2メートルも前になる。L字のネットも気になるし、当ててはいけないという気持ちもある。今まで考えたことのないことばかりで…。イップスになる気持ちが分かります」。本来の投球動作を見失う「イップス」に陥ってしまう打撃投手は、少なくないといわれる。真田氏も例外ではなかった。

 それでも持ち前のずぶとい性格に加え、現役生活で積み重ねた数々の経験が真田氏の心を支える。11年オフには「高橋尚成さんにあこがれて。自分も経験したかった」と、ポスティングシステムを利用して大リーグ挑戦を表明。だが、入札する球団はなかった。1年間プレーした台湾では日本と違って環境面が万全ではなく、球場の通路を練習場代わりにしたこともあった。

 何度も挫折を味わったが、そのたびに新たな環境で順応しようと戦ってきた。第2の人生も決して平たんな道のりではないが「早く慣れないといけない。でも、おかしくなったらおかしくなったでしゃあない。開き直ってね」と、自らに言い聞かせる毎日。現役時代と同じように前だけを向いて、腕を振り続ける。(デイリースポーツ・佐藤啓)

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