楽天・大久保監督の強烈な“置き土産”

 異例の光景だった。16日、札幌から仙台に戻り、コボスタ宮城の室内練習場で行われた練習。野手9人が約2時間半に渡りひたすらバットを振った。その様子は、さながらキャンプの特打のようだった。

 発案者の大久保監督は言う。「スイングに納得いかなかったからやった。これが異例に映るなら、今までいかに練習していなかったかってことだ。それを許容してきたオレの管理不行き届きだ」。顔を真っ赤にしながらまくし立てた。

 チーム打率、総得点ともにリーグ最下位。打線は低空飛行のまま、シーズン最終盤まで推移した。故障者続出、期待した外国人の不振…。低迷の要因は一つではないが、指揮官は“練習不足”と一刀両断した。

 練習中、指揮官は怒鳴り続けた。マシン打撃で流し打ちをした小関には「引っ張らなきゃ意味ねーんだよ!引っ張れ!!」と大声を挙げ、そばで見守っていた草野打撃コーチには「ボケッと見てるな!引っ張らせろ!!お前は何を教えているんだ!!」とどやしつけた。

 指揮官によれば、自身が打撃コーチの時や2軍監督時代から取り入れていた練習だという。特に許せなかったのは、フェルナンドや西田ら、バテている選手が続出したことで「あの程度の練習でへばっているようじゃ話にならない。打てない理由がよ~く分かった」と吐き捨てた。

 ひたすらフルスイングを課した2時間半。これまで取り入れていなかった練習を行うことでフォームが崩れる危険性もあるが、よほど我慢がならなかったのだろう。その是非についてはともかく、この練習が打線好転への最善の策であるならば、もっと早く手を打てなかったのか。この時点で残り17試合。CS進出も絶望的となったタイミングでの“方向転換”は遅きに失した感は否めない。

 その背景には、指揮官がトップダウンで自身の考えをチームに染みこませられない事情があったことは想像に難くない。スタメンや選手起用などにおける三木谷オーナーの現場介入で、現場が混乱したケースは少なくない。現場とオーナーとの間で板挟みに苦しむこともあった指揮官が、断を下すことに対して多少なりとも“遠慮”があった可能性は高い。

 練習終了後、指揮官は選手を集め「好きに練習させて打てなかっただろ?打ってればこんなことはやらないんだよ」と厳しい口調で言い放った。すでに今季限りでの辞意を表明している。最後の最後に取り入れた“デーブ流”には、「お前らしっかりやれよ」という“置き土産”的なメッセージが込められているとも言えそうだ。

(デイリースポーツ・野畑圭司)

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