アギーレ監督解任 失ったものは大きい

 ブラジルW杯の惨敗後、2018年のロシアW杯を目指して発足したアギーレジャパン。だが、その結末は現職の日本代表監督として前例のない八百長疑惑の末に解任となった。3日、都内のJFAハウスで会見を開いた日本協会の大仁邦弥会長は、2日夜にスペイン検察庁からアギーレ監督への告発がバレンシアの裁判所に受理された事実を確認。翌3日午前に幹部を集めて緊急会議を開き、指揮官の解任を決定した。

 就任からわずか5カ月。告発が受理され、今後本格的な捜査が始まる一方で、現段階では「推定無罪」の扱いをされる指揮官の解任を通して感じたのは、日本協会の決断力のなさだ。アギーレ監督の解任を決めるにあたり、大仁会長は6月から始まるW杯予選、さらには18年のロシアW杯への重要性を「今しかなかったのが理由」とした。

 日本サッカーの成長を考えれば、W杯出場権獲得を最優先事項ととらえることは当然だろう。だが「推定無罪だが、W杯予選のために」と告発受理のタイミングで解任するならば、検察庁からの告発が確認され、指揮官が一連の疑惑の“当事者”となった時点で決断するべきではなかったのか。

 もちろん、その決断は簡単なものではない。告発がなされたのは昨年12月15日にアジア杯メンバーを発表した直後で、目前には17年のコンフェデ杯にもつながる公式大会が迫っていた。さらには「八百長疑惑の裁判はスペインでも前例がなかった」と原専務理事が語ったように、先行きの不透明さがあったことも理解はできる。だが、疑惑が浮上した段階では、現地裁判所での事情聴取も2月中に済ませることができるという認識を示し、告発後も起訴されるかどうかを進退判断のポイントとし、告発が不受理で決着すると信じて待つというのが日本協会のスタンスだったはず。最後の最後までアギーレと“心中”するべきだという極論を言うつもりはないが、一連の疑惑に対しての経過を振り返れば、リスク管理の甘さがあったと感じてならない。

 任命責任もある。アギーレ監督との契約締結時に、今回の一件をすべて予見することは難しかったかもしれない。だが、この件で日本代表、日本サッカーに生じた大きなダメージを考えれば、不確定要素も含めて相応の責任が生じるのではないか。大仁会長は自身も含めた役員や責任者の処遇について「理事会に諮る」と語るにとどめたが、個人的な見解としては日本協会が公益財団法人である以上、自身の進退も含めて第三者機関を立ち上げて責任の所在を明確にし、相応の処分を検討すべきではないかと思う。

 決断力のなさ。その結果が招いたものは、各国がシーズン中という難しいタイミングで進めなければならない後任選びの期間と、新体制発足後にW杯予選に向けた準備期間の短さだ。協会が「一番大切」と語るW杯予選と本大会。その最大目標に向けて、失ったものは、あまりにも大きい。(デイリースポーツ・松落大樹)

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