「スルガ銀行CS」は重要なタイトルだ
サッカー報道に携わる者として反省すべきだと痛感した。
昨季のナビスコ杯優勝クラブであるJ1柏と、昨季のコパ・スダメリカーナの優勝クラブであるラヌス(アルゼンチン)が対戦する「スルガ銀行チャンピオンシップ」が8月6日に柏で行われた。柏のMF高山が先制点を奪い、同点とされた後、試合終盤にFW工藤が得たPKをFWレアンドロが沈めるという白熱した展開だった。
反省すべき、というのは、この大会の重要性を十分に報じられただろうか、という点だ。
何せこの試合でのラヌスの力の入れ方が尋常ではなかった。例えばPKの判定の場面、工藤が相手選手からのスライディングをかわしかけていたため、ラヌスの選手はシミュレーションを激しく主張した。その後はMF栗沢がひじ打ちを顔面に受け、高山がベンチに退く際には背中を相手選手に押されピッチを追われた。暴力行為はほめられたものではないにせよ、それだけ本気だった、ということは伝わってきた。
ラヌスの選手は試合後、日本人記者にコメントを求められても「ノーノー」と取材を拒否した。観戦していたJリーグの村井チェアマンによると、VIPエリアでは「アルゼンチンの方がものすごい音を出して見ていた」というから、協会をあげて勝ちにきていたことになる。
こうした情景を見て、ブラジルでのプレー経験が長いカズこと三浦知良が以前、話していたことを思い出した。「向こうではとにかくタイトルというものにこだわる。キャリアで取ったタイトルは?と聞くと、どんなものでも必ず数える」。重要度はもちろん違うのだろうが、ラヌスにとっては南米一のクラブを決めるリベルタドーレス杯も、スルガ銀行チャンピオンシップも同じタイトルであることに変わりはなかった。
勝った柏には「週末にはもっと大事なリーグ戦がある」とコメントしていた選手もいた。そう言う気持ちはよく分かるし、私自身もそう考えていた。だが、本気の南米を肌で知ることができる貴重な機会であるこの大会を、もっと重視してもいいのではないだろうか。
(デイリースポーツ・広川 継)