ハマ番長、サインは行列最後の一人まで

 当たり前の光景になっていた。DeNAの沖縄・宜野湾キャンプ。室内練習場とブルペンの間のグッズ売り場前。夕方近くになると、決まって長蛇の列ができる。色紙やベースボールカード、カメラを手に、ファンのお目当ては“ハマの番長”三浦大輔投手だった。

 「何年前からだったかな?練習後はできるだけサインをするようにしています。練習メニューの最後に『サイン』って入っているみたい」。笑ってそう言う。時には1時間以上かけて、行列の最後の1人までペンを走らせ、写真撮影に応じるのは、日課になっている。

 他球団と比べるとDeNAのキャンプは選手とファンの距離が近い。選手は練習メニューによって、球場から室内練習場やブルペンなどの別の練習場に移動する。他球団の場合、選手関係者専用の導線を作るなどして、接触しにくくする。だが、宜野湾に限ってはそれがない。練習の合間に移動する選手との境界線はなく、気軽に声をかけて、コミュニケーションを取ることが可能になっている。

 球場からブルペンへ、練習中の移動の際に三浦もサインを求められることがある。答えは決まっていた。「今は練習中だから、ごめんね。あとでここに来たら、サインするから」。できるだけサインするのが番長流。だが、練習には集中したい。だから、場所を指定して、いったんは断る。そして練習後には約束通り、ファンの前に登場するのだ。

 「ファンサービスもしたいけど、練習中はさすがに無理ですから。自然にああいうやり方になったんです」。ファンの間で、口コミで広がる。「番長から、必ずサインがもらえる!」。これがキャンプ恒例になった。同じ時間に同じ場所に行列ができることになったのだ。

 今季から兼任コーチを務める。例年以上に多忙を極める。午前6時の早朝ウオーキングに始まって、ジムワークなどの個人メニューをすべて終えて、全体練習に入る。練習の合間、そして練習後には、コーチに変身。他の投手陣の投球練習をチェックし、アドバイスを送る。そしてサイン会…。

 「してあげたくても、できないこともある。取材が入っていて、『きょうは何時まででサインは終わり』ということがたまにある。例えば1泊2日で来ていて、その日しか、チャンスがない。そんな人もいるでしょう。それでもらえなかったら『三浦はサインをしてくれない』ってなるんだろうな」。

 宿舎に戻ってからも実は、サイン攻めは続く。部屋に届いているファンレターに目を通し、返信用封筒付きの色紙やカードには、サインを入れて自ら封をする。正確な数値は出ていないが、キャンプ中にサインする枚数は、1500枚は超える。間違いなく12球団トップクラスだ。

 DeNAはファンサービスを査定項目に入れるなど、ファンとの距離を大事にする。チームの大黒柱が率先してサインする姿は、自然と他の選手たちにも波及する。球場周辺の至るところで選手がサインをする姿は、宜野湾名物。訪れた他球団のファンがその光景を見て驚く姿を何度も見ている。ハマの番長から始まった地道なファンサービスが、ベイスターズのスタンダードになっている。

(デイリースポーツ・鈴木創太)

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