10球団上陸…沖縄県の取り組みとは

 プロ野球は2月1日にキャンプインを迎え、2014年シーズンのスタートを切る。今やキャンプ銀座となった沖縄には、宮崎から移動してくる巨人、広島を含めて過去最多タイとなる10球団が上陸。温暖な地で1年の礎を築く。

 沖縄のキャンプの歴史が始まったのは1979年。日本ハムの投手陣が名護で初めてキャンプを実施してから35年がたつ。元日本ハム監督の上田利治さんはかつて、阪急監督時代に過ごした高知の施設や人、土地に愛着を示しながらも「あの気温を一度知ると、キャンプ地との結びつきを超えて、どの球団も沖縄でのキャンプを考えたくなるよ」とよく語っていた。その後、阪神やロッテ、巨人も沖縄でキャンプを張るようになった。今年は韓国の6球団も沖縄でキャンプを行い、日韓計16球団は過去最多だ。

 様々な観光客誘致に力を入れてきた沖縄県も、大きなチャンスを迎えて新たな取り組みを始めた。昨年2月には「スポーツキャンプ訪問観光促進事業」として、各キャンプ地に巡回バスを走らせ、情報提供するなどキャンプ見学者の利便を図った。2年目を迎える今年は県が「沖縄ベースボールEXPO2014」を主催して、さらなる事業拡大に乗り出した。

 「EXPO」の名前の通り、沖縄県全体を野球の博覧会に見立て、「観る」「知る」「楽しむ」「体験する」などの“野球キャンプエンタテイメント”の世界をイメージしているという。南北キャンプ地の中心でもある北谷町のホテル、ザ・ビーチタワー沖縄内に情報発信基地「メインベース」を設置し、キャンプ見学者のために各球団の練習のタイムスケジュールなど情報を網羅。スタッフを各球団の練習に張りつかせ、LINEやツイッターを使って生情報が逐一入ってくるという。ここには見学者がキャンプ地を巡る前に旅行計画を立てられるようベースボールカフェがあり、侍ジャパンのユニホーム展示コーナーや野球テレビゲームの体験スペースもある。一方、広島を除く9カ所のキャンプ地には当日の練習メニューや周辺観光情報などを発信する「サテライトベース」があり、常駐スタッフが案内役を務める。

 練習を間近で見ていればキャッチボールをしたくなるはずと、DeNAキャンプ地の宜野湾には「キャッチボールパーク」をつくり、グラブや軟式ボールを貸し出す。土、日にはストラックアウトやスピードガンも用意する。「親子グラブ作り教室」に、巨人OB篠塚和典氏による「親子野球教室」の開催もあり、まるでテーマパークのような仕掛けだ。

 本来キャンプは各球団が個別に運営している。各地域の行政や商工会、観光協会などは協力会を組織してキャンプを支援し、観光客誘致や地域の活性化などにつなげてきた。その構図は変わらないが、沖縄県が各キャンプ地を結んで観光事業化することで、よりスケールメリットを出そうという取り組みだ。

 プロ野球キャンプのメッカでありながら、期間中に沖縄県を訪れる観光客はあまりにも少ない。昨年6月、地元のりゅうぎん総合研究所は2013年のプロ野球春季キャンプの調査結果を発表した。それによればキャンプ期間中の観光客は29万3000人で、そのうち県外からの観光客は4万3000人。東京ドームでの1試合分の観客数に過ぎない数字だ。EXPO関係者は「キャンプ情報をテレビで見ている人は多いと思いますが、実際、昨年足を運んだのは4・3万人。しかも別の調査結果によれば、キャンプ来場者の9割がリピーターの方だったんです。全国には4~5000万人の野球ファンがいると言われていますが、生のキャンプの魅力を知っている人はほんの少ししかいないのです」と分析した。練習試合が無料で見られることもあまり知られていないという。

 逆に言えば、そこに伸びしろがある。キャンプはあくまでシーズンに向けた練習に過ぎない。しかし、その練習がこれだけ長期間、毎日のようにファンに公開され、メディアを通しても情報が発信されるのは野球ならでは。「野球には圧倒的な力があります。その野球ファンにもっとキャンプのおもしろさを知ってほしい」とEXPO関係者は国民的スポーツの持つポテンシャルの高さに期待した。プロの練習内容や指導を至近距離で堪能できたり、ノッカーと選手の掛け合いに耳を傾けたり、選手と触れ合ったり、ペナントレースにはない距離感の近さがキャンプ地の魅力だが、それは他の地域がなかなか真似できない観光コンテンツでもある。

 EXPOの目玉として、メインベースや各キャンプ地ブースなどで使用できる特典付きの「プレミアムパス」を販売し、その収益を球団や協力会に配分する仕組みを取り入れながら、来年以降も事業として継続的に続けていく考えだという。まずは県外からの観光客を昨年の4万3000人から少しでも増やしていくことが目標で、「今年しっかり話題づくりをして、来年以降につなげていきたい」とEXPO関係者は2月1日に備える。(デイリースポーツ・松森茂行)

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