ジャンプ初代女王狙う「2人のサラ」

 冬の祭典である冬季五輪がいよいよ近づいてきた。ロシア連邦、南部のソチで2月7日に開幕する大会には、113人の日本選手団(男子48人、女子65人)が出場予定。海外開催の冬季五輪では過去最多の派遣数で、女子選手数が男子を上回るのも初めてのことだ。

 そんなソチ大会。日本選手団の中でも金メダルの期待が高い選手の一人に、新種目の女子ジャンプの高梨沙羅(クラレ)がいる。17歳という年齢の若さはあるが、ジャンプW杯の通算17回優勝は男女を合わせ、日本勢最多だ。男子に比べて、まだまだ競技人口が少ない女子だが、この実績は高梨が世界トップレベルのアスリートである一つの証明であり、ソチ五輪で金メダルの有力候補と期待される背景となっている。

 高梨は、今季もW杯の個人戦で、開幕4連勝と好調。第5戦に2位となったが、その後は再び4連勝。直近のW杯(スロベニア、プラニツァ)でも、優勝こそなかったが2戦連続で2位と抜群の安定感を見せている。全日本のコーチ陣からも「(高梨)沙羅の敵はケガと体調不良」という声が聞こえてくるなど、もはや金メダル筆頭候補という位置づけがされている。

 だが、大会直前になってライバルも表舞台に帰ってきた。高梨と合わせて「2人のサラ」とも呼ばれる、サラ・ヘンドリクソン(米国)だ。女子ジャンプのW杯が始まった11‐12年シーズンの総合王者は、高梨が「憧れのジャンパー」と語る存在。昨季も高梨に次いで年間総合2位になった実力者だが、昨年8月の練習中に右膝のじん帯を断裂し手術を受けた。一時は五輪出場も絶望視されたヘンドリクソンだが、充実した医療体制の後押しもあって復帰。今季、ここまで公式戦の出場はないが、ソチ五輪の女子ジャンプ米国代表として名を連ねた。

 ヘンドリクソンの復帰は、高梨の金メダル獲得に向けて大きな障壁となりそうだが、高梨自身は「憧れの選手と一緒に大会に出られるのはうれしいし、モチベーションになります」と意欲を燃やす。復帰直後のヘンドリクソンの状態と、戦略次第だが、五輪前最後のW杯(オーストリア、ヒンツェンバッハ)で「2人のサラ」の直接対決が実現する可能性もある。

 そこで、昨季の直接対決を見てみるとどうだろうか。W杯で高梨がヘンドリクソンの上位に入ったのは個人の16戦中で10戦と勝ち越している一方で、世界選手権の個人戦ではヘンドリクソンの後じんを拝して2位。互角と言える状況だ。

 昨季からの課題である着地を、実戦を通じて改善に努めてきた高梨と、過酷なリハビリを経て復帰したヘンドリクソン。「2人のサラ」の現在地は、どうなっているのだろう。五輪の初代女王を占う前哨戦に、注目が集まる。

(デイリースポーツ・松落大樹)

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