監督不在PL学園が快進撃した理由

 部内暴力による6カ月の対外試合禁止処分が明けて2カ月。監督不在で戦ったPL学園野球部の快進撃は、近畿大会1回戦で福知山成美(京都)に敗れて止まった。

 河野有道前監督が4月末に辞任。後任の人選が難航し、半年を経た現在も空席のままだ。

 部長も別の不祥事で謹慎していたため、秋季大阪大会で部長を代行したのは正井一真校長だった。野球経験がなく、運動は体操部に少し在籍した程度という。試合中にサインを出すことはできず、選手たちが交代で出し合った。

 「子供たちに『先生もサインを出すふりで動いてください』と指示されました」と正井校長。戸惑った様子で、ベンチで立ったり座ったりを繰り返した。それでもチームは快進撃を続けた。

 大阪大会5回戦まですべてコールド完封勝ち。圧倒的な打力を発揮した後は、上宮太子との準々決勝を1‐0の接戦でものにした。

 決勝は履正社に3‐4で惜敗。勝った履正社・岡田龍生監督でさえ「やりにくい相手。監督不在で勝たれたら、私の役割は…」と苦笑いするしかなかった。相手チームには不気味なプレッシャーだったのかもしれない。

 監督不在のチームがなぜ勝ち続けることができたのか。最大の理由は選手個々の能力の高さだ。

 今年のPL学園は、二塁を守る中川圭太主将を中心とする2年生に好素材がそろった。鈴木達馬、渋谷勇将の両投手も安定しており、投手交代のタイミングに迷うようなことも少なかった。

 大阪大会5回戦まですべてコールド勝ちしたように、打撃陣の能力も高い。そのため、打てないときに攻撃をいかに工夫するかなど、細かいサインを出す場面も限られた。

 さらに、監督不在という環境がナインの判断能力を養った面もあるだろう。好素材の選手たちが緊急事態に一丸となったからこそ、なしえた快進撃でもある。

 正井校長によると、新監督は来春までに選任予定。指揮官が固定されれば、さらに本領を発揮するだろう。来春センバツ出場は絶望的だが、夏の甲子園をかけた戦いもPL学園が主役になりそうだ。

(デイリースポーツ・中野裕美子)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

コラム最新ニュース

もっとみる

    ランキング

    主要ニュース

    リアルタイムランキング

    写真

    話題の写真ランキング

    注目トピックス