喜友名、沖縄初の金メダル 果たした亡き母との約束 表情一つ変えない絶対王者が涙

 演武する喜友名諒(撮影・高部洋祐)
 決勝で迫力のある演武を見せる喜友名諒
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 「東京五輪・空手男子形・決勝」(6日、日本武道館)

 沖縄初の五輪金メダリストが誕生した。初実施の男子形の決勝で、喜友名(きゆな)諒(31)=劉衛流龍鳳会=がキンテロ(スペイン)を下し、金メダルを獲得した。空手発祥の沖縄県出身で、同県で生まれた選手の五輪金メダル獲得は初めて。他を寄せ付けない強さで予選、準決勝を高得点で勝ち上がり、決勝でも1・06点差をつけて圧倒した。

 静寂を勝者が支配した。武道の聖地の中央に正座して深々と礼をしたのは、19年2月に病気で亡くなった母紀江さん(享年57)への報告だった。「約束を守ったよ」。涙とともに喜友名の表情が初めて緩んだ。

 「五輪を楽しみにしていたけどかなわなかった。優勝の表彰台に一緒に登らせてあげたかった」。沖縄をたつ一日前に遺影を荷物に加えた。望みどおり台の中央に母と立ち、「安心していいよと伝えた」と肩の荷を降ろした。

 圧倒的な存在感を見せつけた。張り詰めた空気を切り裂いた決勝の形は「オーハンダイ」。師匠で世界選手権3連覇の“生きる伝説”佐久本嗣男氏(73)が「最初から気合を入れて、相手を砕く」と説明する力強い演武で、世界選手権3連覇の貫禄を見せつけた。

 中学時代から喜友名を指導し、紀江さんの生前に金メダルを約束していた佐久本氏は「何がなんでも金を取らせたい」と「満点(30点)」を師弟の目標に掲げた。28・72点での優勝。それでも、師匠は「今日の出来は満点。気持ちが入ったいい演武だった」とまな弟子をたたえた。

 空手を始めた5歳の時、喜友名は両親から「やるなら最後までやり通しなさい」と告げられた。亡き母との約束があるからこそ「辞めたいと思ったこともないし、今までもこれからも、空手を追究していきたい気持ちがある」と話す。その言葉どおりの「努力の天才」と佐久本氏。入門時から365日、那覇市内の道場で師匠とともに一日も稽古を休んだことはないという。

 国際大会は最近8年間でわずか1敗。2年に一度の世界選手権は2014年から3連覇中で、全日本選手権も史上最多の9連覇を果たしている。プレミアリーグでの金メダル数でギネス記録(12年9月1日~20年1月24日で19回)を持つほどに勝利を極めた末に、五輪の頂点に立った。

 空手界の悲願である初の金メダルは、その発祥の地、沖縄県出身者としても初だ。今大会前まで金メダリストが誕生していなかった都道府県は、鳥取と沖縄の2県。3日にボクシング女子で鳥取県出身の入江聖奈(日体大)が金メダルを獲得し、沖縄は最後の1県となっていた。

 「沖縄の歴史を刻むことができてうれしい」と喜友名。空手は24年パリ五輪で実施競技から再び消えるが「沖縄の伝統が世界の方々に愛されていることを、五輪を通じて沖縄や世界の皆さんに伝えられると思う」と夢はつないだ。沖縄の誇りは、大トリにふさわしい男によってもたらされた。

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