現存する最大の異人館…神戸「旧ハンター住宅」が「里帰り」準備で28日公開終了→解体へ…クロージング企画大盛況
「神戸市立王子動物園」内(神戸市灘区)に建つ、現存する異人館のなかで最大規模の洋館「旧ハンター住宅」の一般公開が、12月28日で終了する。閉館に先立ち、旧ハンター住宅クロージングイベント『洋館で楽しむ歴史と音楽』が12月20日に開催された。
同住宅は、ドイツ人のA.グレッピー氏が明治22年(1899年)ごろに建てた住宅を、エドワード・ハズレット・ハンター氏が買い取り増築などの改造をおこない現在の姿とした。
当時は、神戸市中央区のハンター坂の北の異人館が多く並ぶエリアに建っていたが、ハンター氏のあとに、さらに複数の所有者の手に渡ったあと、兵庫県が取得し、1963年に県の施設の北側(現在の場所)に移築された。その後、県の施設は移転し、動物園が広がったため、同住宅は動物園内に取り込まれる形になった。1966年には、「国の重要文化財」に指定されている。
◆ 阪神淡路大震災も乗り越えて…北野地区に移築する「里帰り」目指す
阪神淡路大震災では、煙突が折れて室内に落下するなどの被害を受けて修理されたが補強などはおこなっていない。そのため、今回、本格的な耐震補強工事のため一旦解体することになった。
2026年1月から調査が始まることから、内部見学ができるのは12月28日までとなる(見学日は土日のみで、12月27日と28日で終了)。調査・解体後は、北野地区に移築する「里帰り」が検討されているが、完了時期などは現時点で未定だという。
20日は『洋館で楽しむ歴史と音楽』と題したイベントがおこなわれ、1部では神戸市文化財課学芸員が、ハンター氏とハンター住宅について、古い写真を参照しながら解説。
2部は神戸市室内管弦楽団の3名によるコンサートで、バッハやモーツァルトなどクラッシックの名曲、5曲が披露された。洋館に優しく響く弦楽の音色に、参加者は当時の雰囲気を感じながら聴き入っていた。
動物園内という環境に立つため、大きな音を出すことはできず、こうした音楽イベントの開催は非常に珍しいそう。最初で最後の大変貴重な機会となった。
イベントに参加した大阪在住の女性は、「ハンター邸が好きで、先着申込だったクロージングイベントの受付時間に待機して、申し込みました。10月にも見学に来ていて、陽が入った2階の廊下がキラキラと輝いて本当にキレイで。2階から見渡せる景色も好きなんですけど、北野に移るかもしれないと聞いたので、また見晴らしの良い場所に移ったらいいなと思っています」と話し、じっくり見学しながらお気に入りの場所の写真を熱心に撮影していた。
「旧ハンター住宅」の内部公開は、12月27日と28日にて終了。公開時間は朝9時30分から16時まで。入場無料(動物園の入園料は必要)。4月の桜の季節までは、外部は公開が続く予定(その後は仮囲いされるため、外部見学もできなくなる)。
取材・文・写真/太田浩子
(Lmaga.jp)
