元自衛官タレント・かざり「ガンアクションができる女優に」

YouTubeチャンネルで自衛隊体操トレーニングを披露して270万回を超える再生数を記録するなど、元自衛官という経歴を生かして幅広く活動しているタレント・かざり。そんな彼女が、全国公開中の『ビューティフルドリーマー』で映画に初出演。

大学の映画研究会の部員たちが映画づくりに励む同作で、戦車について説明する広報役に扮している。今回はそんなかざりに、映像づくりのこと、自衛隊での経験、そしてアニメやコスプレへの思い入れなどについて大阪で話を訊いた。

取材・文/田辺ユウキ 写真/バンリ 撮影協力/梅田スカイビル・空中庭園展望台

「コスプレは全身をつかった作品への愛」──『ビューティフルドリーマー』では、戦車の撮影にやって来た映研部員をアテンドする役柄ですね。まさに、かざりさんの元自衛官という背景を生かしたキャラクターに。

もともと、別の役のオーディションを受けに行ったのですが、本広監督が「そのままのかざりさんとして、出て欲しい」と言ってくださったんです。2019年夏頃に撮影したのですが、当時はお芝居の経験もなく、カメラの前に立つのも初めてでしたので自衛隊の訓練よりも緊張しました。

──日本大学芸術学部出身ということですが、そのときは映像制作などは?

当時はデザインを勉強していたので、ポスターなどの平面デザインの作品づくりをおこなっていました。課題で「よこはま動物園ズーラシア」のポスターを制作したのですが、そこで入選して動物園に貼られたときはすごくうれしかったです。

──元自衛官ネタでYouTubeのチャンネルにも動画をたくさんアップしていらっしゃいますけど、『ビューティフルドリーマー』の撮影が終わってから取り組み始めたことなのですか。

本格的に始めたのは、その頃だったと思います。この映画を通じて、改めて映像づくりの大変さを知りました。また、Youtubeはほとんど自分ひとりでやっていかなきゃいけない。

撮影を自分でやって、テロップを入れたり切ったり(編集)したり、音楽選びもして、サムネイルも作らなきゃいけない・・・って感じなので、自主制作映画とまではいかないですが、それでも私自身のパーソナルな部分を表現する手段としてやりがいがあります。

──かざりさんの動画で特に人気なのが、「ソロキャンプ」ですよね。

キャンプ動画ではかなり長い時間、カメラをまわしています。キャンプ中はほとんど撮りっぱなしです。そうすると毎回、ヤマ場のような出来事が起きる。料理していたら、目玉焼きが爆発したり。でも、あれは狙っていないんです。ずっとカメラをまわしていたら、そういうところもちゃんと撮れるし、「やらかした!」みたいなハプニングこそが動画のヤマ場になる。

──動画制作をする上でこの映画に参加したことは経験としてどうですか。

すごく大きいです。それまでも遊び程度に動画を撮ったりしていましたけど、この映画に参加してからちゃんとスキルが上がった気がします。

──「カメラをちゃんと回せばヤマ場が撮れる」というお話ですけど、映画のなかでは、戦車を撮りに来た映研部員が、カザリ(役名)のことが気になりすぎて舞い上がっちゃう。直接しゃべるとドギマギしているクセに、カメラをまわすとカザリのことをガンガン撮っちゃうという。

これは私にも当てはまることなんですけど、写真撮影会などの場でも、「直視は緊張する」というカメラマンさんが結構多いんです。「ファインダー越しなら大丈夫なんだけど、直接見るのは恐れ多い!」って(笑)。

──ちなみにかざりさんにとって、直視するのは恐れ多いと思うほど尊いものってなんですか。

『攻殻機動隊』シリーズのキャラクター・草薙素子がずっとあこがれなので、作品を観ているときも尊さが・・・。実は、恐れ多くも髪型をちょっと意識しています。美容師さんに画像を見せて「前下がりのショートにしてください」と伝えているんです。

ただ、草薙素子は髪色が紫なんですけど、マネージャーに「さすがに紫はやめてくれ」と止められました。

──かざりさんはコスプレイヤーとしても活動されていますが、劇中、同じく人気コスプレイヤー・伊織もえさんの「コスプレは二次元を三次元に落とし込むところが魅力」というようなセリフがあるじゃないですか。まさにこの映画のテーマである夢と現実の関係性をあらわしていますよね。

自分を含めてコスプレをする人たちは、まず作品のことが大好きで始めると思うんです。私の場合、好きな作品のイラストをいつも描いていて、それが発展してコスプレの方にいきました。

自分の手で描いていた愛が、全身を使った愛へと広がっていったんです。頭のなかで想像していた好きなものを、まさに現実化させる感じですね。

──先ほど「この映画で初めて演技をした」とおっしゃっていましたが、コスプレのときはある意味、キャラクターを演じているんじゃないですか。

確かにそうかもしれません。私の場合、元自衛官という印象がどうしても強くなるはず。どんなアニメのキャラクターのコスプレをしても、自衛官っぽさが出ちゃうんです。だから、ちゃんと演じないといけません。このかざりという人間自体も、キャラクターを演じているかもしれません。

──ということは、今こうやって接しているかざりさんと、普段のかざりさんは別物かもしれないってことですね。

そこはこの映画と同じで夢と現実ということで・・・ヒミツです!

「夢の世界に元気づけられて生きてきました」──自衛官って体育会系やアウトドア系な人が揃っているイメージですけど、アニメ好きなど文化系の方もいるんですか?

実は結構多いです。休日はずっとDVDでアニメを観ている人もいましたし、私もいろんな自衛官の人たちに『ガールズ&パンツァー』、『攻殻機動隊』、『BLACK LAGOON』などを薦めていました。そこはみんな、やっぱりミリタリー系作品が好きなんですよね。

──意外です!

イメージ通り、自衛隊はおカタい職業かもしれません。でも、もちろんそれだけではない。退職後の私の役割は、そういうイメージをちょっと柔らかくして、自衛隊の裾野を広げて親しみやすくすること。もともと広報をやりたくて入隊したので、芸能活動を通して自衛隊に貢献できたら良いなって。

──劇中に登場する映研部は全員個性的ですけど、自衛官のみなさんもキャラは濃そうですね。

私の場合はまず女性自衛官教育隊というところに入ったのですが、そこで感じたことがあるんです。これはあくまで私の偏った印象なのですが・・・。

──かざりさんの個人的な見解ですね。

大まかに4つのタイプに分けられる気がしたんです。ひとつはバリバリの運動系。女バス(女子バスケットボール部)みたいな感じ。次は私のようなオタク系。

運動は苦手だけど座学が得意だったりする。3つめのタイプはお姉さん系。運動部系もオタク系も両方いけて、ある意味どっち付かずだけど、まわりを和ませてくれる。集団生活をする上で欠かせない、しっかり者。

──4つめは?

「なぜ入隊してきたのかパッと見は謎!」というタイプです。私が出会ったなかには、家柄的にお嬢様の子もいました。「なぜ入隊したんだろう」とずっと不思議だったんですけど、理由を尋ねると「家業を継ぐのが嫌だから」ということだったんです。

ほかにも主婦の方もいらっしゃいましたし。運動部系しかいないと思われるけど、いろんなタイプの隊員がいましたね。

──なるほど、ちなみに任期満了してから約3年経ちますが、トークや動画などで自衛官ネタが尽きたりはしませんか。

まだまだ頭のなかにいろんなアイデアがあります。でも定期的に、駐屯地や基地へ行ってネタを仕入れたいです。あと、駐屯地や基地とのコラボをやっていきたい。

YouTubeのチャンネルは自分自身を表現するものなので、著名人の方とのコラボはあまり考えていなくて。もちろんお話があればぜひやりたいのですが。でもまずは、自分の大切な経歴である自衛隊とコラボして、相乗効果として面白いものを生み出していきたい。

──かざりさん自身、これからはタレントとしても活躍の場がかなり出てきそうですね。

お芝居のお仕事はもっとやっていきたいです。私にしかできない個性を生かして、自衛官、軍人、警察官などの役に挑戦してみたい。ほふく前進もできますし、実弾を打った経験もあります。本格的なガンアクションができる女優さんを目指したいです。

──実際に銃を撃った経験を持つ役者って決して多くはないはず。映画やドラマの銃撃シーンを観ていて、「それって嘘じゃん」と感じることもあるんじゃないですか。

もちろんありますが、でもそういうフィクションも含めて映像作品のおもしろいところですよね。夢の世界なので。エンタテインメントの面で、ミリタリーのことを細かく言うのは何だかヤボな気がするんです。

──それはすごく良い意見ですね。

私自身、ミリタリー系のアニメや漫画を見て、正しいか間違っているかという部分ではなく、夢の世界そのものに元気づけられて生きてきました。そこにツッコミをいれると楽しい夢が壊れちゃう気がする。だから何があっても言わないようにしています。ただ、自分が演じるときはめちゃくちゃリアルにやろうと思います(笑)。

(Lmaga.jp)

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