江戸時代の見世物的な感覚にワクワク、サイエンス×アートの展覧会

※この展覧会は開催中止になりました(3月31日発表)

「アート×サイエンス・テクノロジー」をテーマにした文化芸術の祭典『KYOTO STEAM -世界文化交流祭-』が、この春、スタート。「京都市京セラ美術館」(京都市左京区)で4月4、5日に展覧会がおこなわれる。

「STEAM」とは「Science(科学)」「Technology(技術)」「Engineering(工学)」「Mathematics(数学)」という理数系ジャンルの頭文字に、「Art」を加えた造語。理系と文系で水と油のアートとサイエンス。しかし、それが融合すれば、フレンチドレッシングのようなおいしいイノベーションが生まれるかも。我ながらザツな説明だが、そんなプロジェクトが、芸術系大学とハイテク企業の多い京都から始まったのだ。

アーティストと企業・研究機関のワークショップによる作品展示は、壮大なコンセプトだけに、難解な作品が出てくるのかと思ったら、水の流れる西陣織あり、テント膜の巨大彫刻あり、なかなか興味深い。

科学とアートのハイブリッドというより、実用先端技術と面白がりの相乗効果が炸裂している。計算されすぎなサイエンスと、洗練されすぎなアートが一緒に冒険した結果、意外にも作品に現れたのは、見世物的な面白さだった。江戸時代、平賀源内が静電気発生装置「エレキテル」を見世物にしてブレイクしたように、科学もアートも、そのルーツは見世物。STEAMの未来は、このザワッとする「見世物小屋」感覚にあるかもしれない。

なお、紹介する作品は、2021年3月に実施予定の国際的なアート・コンペティションのためのスタートアップ展として展示される。

クリエーションも職人技もテックにおまかせ!な未来

同時開催の『アート×サイエンス LABOからGIGへ』では、京都市内の大学を拠点としたワークショップの成果を発表。京都工芸繊維大学「KYOTO Design Labo」の展示に驚いた。近代建築の巨匠・武田五一が手掛けた「和楽庵洋館」(大正5年)に、先端技術を使って「増築」「修復」をおこなったものだ。

たとえば、AIが、武田が目にして発想の元としたであろう模様を読み込み、深層学習(ディープラーニング)も使って、武田五一の発想しそうな壁紙をデザインする。破損した部材は、3Dプリンターやロボットアーム、AR(拡張現実)を用いて復元。こうなると、左甚五郎の新作彫刻も、ダヴィンチのデザインする靴も夢ではない。人間のセンスや技の限界を、サイエンスが超えてゆく世界を目の当たりにできる。

壁面では、武田五一が見たであろう日本の伝統模様と、アールヌーヴォーなど洋風の意匠を読み込んで、AIが「武田目線」を学習し壁紙をデザインする「武田五一ジェネレーター」が動作中。

機械にはない「人間の心の伸びしろ」を示す展示もあり

テックの進化がここまで来ていると知ると、逆に「人間にしかできないことってなんだろう?」という疑問も頭をよぎる。京都市立芸術大学の川嶋渉(日本画研究室)教授らの作品は、それに応えるものでもあった。

展示は、墨の濃淡、筆で描いた花、拾ったものを描いた絵。サイエンスとはまったく関わりがない見慣れたアート作品だが、ここには、3人の作家の「写生」に向かうスタンスの違い、世界観の違いが見て取れる。アーティストの内的な世界の多様性、想像力の広がりといってもいい。

科学は人間の能力の限界を設定し、それを拡張させるイノベーションを考えるが、アーティストは、「内向きの拡張」を目指している。人間の心には無限の伸びしろがあり、そこに幸福があるのではないか? そんなメッセージが深い。

取材・写真/沢田眉香子

(Lmaga.jp)

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