女優・羽野晶紀 野田作品を見てショック「話がわかんなくて(笑)」
劇作家・演出家の野田秀樹が率いるNODA・MAPの舞台に、女優・羽野晶紀が20年ぶりに出演。90年代には「劇団☆新感線」の看板女優として、アイドル並みの人気を誇っていた彼女が、結婚と子育ての一時休業から少しずつ活動を再開し、「舞台女優・羽野晶紀」の新章に突入する。舞台女優としての歩み、そして、今回の新作について羽野に話を訊いた。
取材・文/吉永美和子
「劇団はギャラなし、生活するために芸能人を(笑)」(羽野晶紀)
──一昨年「劇団☆新感線」の舞台に復帰された公演を観たんですが、昔と変わらないかわいらしさに、すごく驚きました。
ありがとうございます。
──私は、羽野さんが『ムイミダス』『未確認飛行ぶっとい』(ともに読売テレビ)など深夜のコント番組に出演されて、大ブレイクした頃を知る世代(40代)なのですが、ご自身は当時の状況を、どのように受け止めてたんでしょう?
私はもともと、歌ったり踊ったりするのは好きだったけど、お芝居には興味がなかったんです。でも(大阪芸術)大学に入ったときに、古田新太さんとか面白い先輩方がいっぱいいて・・・。
その人たちが「こんな面白いことをやってるんだ!」というのにショックを受けて、「劇団☆新感線」で演劇を始めて。でも劇団はギャラが出なかったから、生活をするために芸能人をやってました(笑)。
──まさかの生活の事情がベースに。
でも嫌なことじゃなくて、面白かったんです。自分に合ってたんでしょうね。芸能人としてお金を稼いで、劇団でお金にならないことをするってことを、長年大阪でやってたんですけど、東京のNODA・MAPから初めてお声がかかったときに「お金もらえるらしいよ」と(笑)。
東京の人って、こんなにちゃんと役者にお金をくれるんだって。でも「東京ではそれがあり得てる」というので、私は一石を投じた人間のひとりだと思うんです。「(大阪の役者にも)ちゃんとギャラを払わないといけないよ」って。
「新感線より紳士な人ばかりだし(笑)」(羽野晶紀)
──新感線で学んだことで、今も糧になってることはありますか?
最初はギャラが出なかったから、みんな貧乏でね。300円ぐらいしか持ってなくて「素うどんなら食べれる」みたいな(笑)。そういう状況を経験していると、何もなくなったときでも「あの頃に戻るだけだ」って思えるんです。
あと芝居の方も、めちゃくちゃしんどい。「ここで息を吸わないと死ぬかもしれない」ってぐらい、ギリギリまで追い詰められるし。でも精神的にも肉体的にも、いろんなキツさをここで知ったので、よその現場で「しんどい」と思ったことがないです。
──では出演者が口をそろえて「体力的にキツい」とおっしゃる野田さんの舞台も・・・。
全然大丈夫。野田さんやさしいし、周りも新感線より紳士な人ばかりだし(笑)。この前久々に出たときも「劇団員、相変わらずだなー」って思ってましたよ。
──とはいえ新感線とNODA・MAPの舞台にはいろいろと違いがあるので、カルチャーショックみたいなことはあったのでは?
初めて野田さんの作品を観たとき、すごくショックだったんですよ。話がわかんなくて(笑)。新感線は大丈夫じゃない? マンガみたいだし。野田さんの作品は話があっちこっちに行くから全然わかんなくて、「私ってバカなんじゃないかなあ?」って。
でも(登場人物の)誰かの目線で見るようにしたら、つながりがわかるようになりました。で、実際に出てみると、もっと面白い。野田さんの書くセリフはすごく素敵だから「あ、しゃべりたい」って思うんです。
──物語とか、配役についてはもう野田さんから聞いてますか?
12世紀の日本を舞台に『ロミオとジュリエット』の後日談をやるというのしか、私も聞いてないんですよ。先日野田さんにお会いしたときに、その辺をたずねてみたんですけど「大丈夫大丈夫、考えてるから」みたいに言われました(笑)。
先日は出演者のみなさんとのワークショップがあって、野田さんが書いた短い脚本を元に「このシーンをどんな風に作ろうか?」というのをグループに分かれて考える、ということをやったんですけど。
──そこでは羽野さんは、どんな役をやったんでしょう?
いろいろですね。(ジュリエットの)乳母をやったかと思えば、ジュリエットもやったり、あるいは波や雨とかの風景になるとか。そういうことをやってると「こんな筋肉使わないよ、普通」ってところを痛めました(笑)。
結構、頭を使うので、最後の方はみんなカッスカスになって帰る・・・という状態で。これが実際の舞台でどう生かされるのかは、実は私も楽しみですね。
「子どもたちは、もっとやった方がいいよって」(羽野晶紀)
──劇中でクイーンの曲を使用することでも注目を集めていますが、そのときはもう使っていたんですか?
曲を流しながらやってたんですけど、野田さんの世界と案外違和感はなかったです。きっと本番の舞台でも、いい効果として使われるんじゃないかなあ。
でもこのタイミングで、映画『ボヘミアン・ラプソディ』でまたクイーンに火が付いたのは、本当にビックリしました。うちの子たちもあの映画でハマって、今では毎日聴いてますよ(笑)。
──お子さんは舞台に立つお母さんをどのように感じられてるのでしょうね。
新感線の公演(2017年)は、2カ月間東京だけだからできたんですよね。やっぱり子どもが小さいうちは、地方のロングラン公演が厳しいんです。でももうそろそろ、家族で協力しあって、乗り切れないかなぁーっと(笑)。
──ではこのNODA・MAPが、地方ロングラン公演ありの舞台出演第一弾になると。
このぐらいの期間、家に帰れないのは初です。でも子どもたちは、この前私が出た新感線を観たときに「もっとやった方がいいよ」って言ってくれたんで。
──お子さま公認というわけですね。子育てという長い充電期間を経て、久々に舞台に戻ったとき、「ここが自分、変わったな」と思ったことは何かありますか?
子育てというより、年齢が関係してるかもしれないけど。いろんな経験をしたことで、役作りをする上で「どのパターンで行こうかな?」っていう選択肢が増えました。特に脇役だと、主役より(役作りが)遊べるから楽しい(笑)。だから歳を重ねるのって、全然悪くないと思いますね。今までNODA・MAPでは、ずっと(出演者で)年下の方だったんですけど、今回は女子のなかで一番上なんです。それも楽しんでやりたいですよね。
──最後にNODA・MAPを見たことない方に向けて・・・、特に「野田秀樹は難しい」と思ってる方に向けて「ここにポイントを置いたらいいよ」というアドバイスがあれば、お願いします。
最近感じるんですけど、高校生の娘と同じ映画や芝居を観ても、感動する場面や(セリフに)書かれてない部分の受け取り方が全然違うんです、年齢によって。だから、さっき「誰か特定の人の目線で見たらいい」って言いましたけど、そのなかでも自分と年齢が近い役の人の目線で見たら、さらにストーリーを眺めやすくなるんじゃないかなって思います。
そんなNODA・MAPの新作『Q』:A Night At The Kabuki。ロックバンド・クイーン側から、アルバム『オペラ座の夜』を舞台化できないかというオファーを受け、『ボヘミアン・ラプソディ』を含む全楽曲を使用して創作されるということで、演劇ファン以外からも熱視線を浴びている。今秋、東京・大阪・北九州で上演され、大阪公演は、10月19日から27日まで「新歌舞伎座」(大阪市天王寺区)にて。チケットはS席12000円ほか、9月7日に発売される。
(Lmaga.jp)
