熱すぎて伝わらない、滋賀愛100%の文具「びわこテンプレート」

滋賀県民が愛してやまない日本一の湖・琵琶湖を、愛しすぎるゆえに誕生した文具がある。琵琶湖をすらすら描くことができる定規、その名も「びわこテンプレート」だ。筆者は大阪府民だが、TVで見た瞬間にひとめぼれ。すぐに通販サイトで購入し、ヒマがあれば夢中で琵琶湖を描き続けている。そんなテンプレートを開発した「コクヨ工業滋賀」(滋賀県愛知郡)を突撃した。

寸法にもこだわった「びわこテンプレート」って?

お馴染み「キャンパスノート」の大部分を生産する国内最大級のノート工場「コクヨ工業滋賀」。「びわこテンプレート」は、滋賀・琵琶湖をモチーフとした同社の独自ブランド「びわこ文具」から生まれたもので、「琵琶湖」をはじめ、そこに生息する生きもの「なまず」「かいつぶり」、滋賀の歴史をかたどった「しろ」「しゅりけん」など、滋賀と馴染み深い形がすらすら描けてしまう魔法の定規なのだ。

しかも「琵琶湖」は約1/100万スケールの大きさなので、湖周辺の距離感も把握しやすい。パッケージ台紙には、琵琶湖・淀川水系のヨシ紙を使用しており、環境にもやさしく、デザインもすばらしい。その結果、2017年には『日本文具大賞』デザイン部門の優秀賞を受賞し、「これまで売れたびわこテンプレートを並べると琵琶湖を横断できる」ほどのヒット商品だ。

私は大阪府民なので琵琶湖を描く機会はこれまで一度もなかったけど、滋賀県民にとってはかなり便利な文具なんだろうな・・・。「具体的にどんなシチュエーションで使ってるのか知りたい!」と思い、滋賀県民の声を求めていざ滋賀へ向かった。

県民所持率100%だと思いきや・・・まさかの知名度ゼロ!?

まずは滋賀でも人通りの多い駅・草津駅や、コクヨ工業滋賀の最寄りのJRの駅(といっても車で約30分)の能登川駅で聞き込み開始。駅近くのコンビニ店員さんに「これ持ってますか?」と聞くも、「初めて見た」との回答、「そもそも琵琶湖とか書くことないし」と突き放され・・・。その後も「知らんなあ。コクヨさんはおもろいもん考えるな~」(タクシー運転手の男性)、「ちょっとわからないですね」(駅員さん)と知名度はほぼゼロ。約20人に聞いて唯一「持ってないけど知ってる」という女子中学生に出会えたくらいだ。

えぇっ、なんで滋賀県民にこんなに知られていないの・・・? ちょっとコクヨさんどういうこと~!?と開発・企画担当の田中さん、岡田さんを直撃した。

「琵琶湖、描ける?」「描けへん!」で生まれた琵琶湖定規

──びわこテンプレート、愛用しています! そもそも、どういうきっかけで生まれたんでしょうか?

田中さん「ありがとうございます! ようこそお越しくださいました。我々コクヨ工業滋賀では、これまで琵琶湖の形をしたクリップやふせん、マスキングテープなど琵琶湖にまつわる商品を開発してきました。それで、もっと滋賀らしいものを出したいなと開発担当で話していて、『っていうか琵琶湖、フリーハンドで描ける?』という話になって。いざ描いてみたところ『描けへんやん!』と(笑)。で、テンプレートがあればいいやん、欲しいやんと話が進んで」

──それだけ琵琶湖に携わってるみなさんが描けないなら、誰が描けるんだと。

田中さん「そうなんです。で、たまたま通りかかった他部署の人に相談したら『いいやん!』と言ってもらえて、それからは『使うシーンはどこやろう』『手帳に挟んで使うならお天気マークがあったら便利やんな』『琵琶湖の周りで使うとすると、車や自転車、ヨット』『自然観察ではかいつぶり』など話し合ってマークを追加していきました」

岡田さん「このコクヨ工業滋賀がある愛荘町って雪深いところなんですね。ゲリラ地帯みたいになるので『雪マークは外せへんな!』とか。ほかにも入れたいマークはいっぱいあったんですけど、面積的な問題や強度面で断念しました。発売後に『平和堂のハト入ってないやん!』って意見もくださって、滋賀愛を持ってちゃんと見ていただいてる、とうれしかったです(笑)」

琵琶湖からの位置関係で場所を説明しがちな滋賀県民

──かなり計算されてこのテンプレートは成り立ってるんですね。琵琶湖が約100万分の1スケールというのも驚きましたけど。

岡田さん「私も驚いたんですよ。田中さんがちゃんとした寸法で描きたいって言い出して、このサイズで大丈夫? そのなかに全部入るの?ってすごいドキドキしました(笑)」

田中さん「県外の方に『いつ使うんですか』ってすごい聞かれるんですけど、たとえば記者さん、今日コクヨ工業滋賀に来られるとき、どの辺の位置にあるんだろうって思われませんでした?」

──えっと・・・琵琶湖の右下らへんだったと思うんですが、詳しくはわからないです。

田中さん「(テンプレートを指さしながら)実はね、このちょうど☆マークの辺りがコクヨ工業滋賀なんですよ」

──あっそうなんですね?! すごっ・・・

田中さん「滋賀県民って琵琶湖からの位置関係で場所を説明することが多いんですよ。『私の家はこの辺だよ』って琵琶湖を起点にして。家から博物館までは車で何分かかるとか、そういう風に使うときに縮尺って大事だなと思ったんです。100万分の1なので、定規で3cmだから~って計算しやすいでしょ!」

──た、たしかに・・・? 滋賀の方って琵琶湖基準で説明するんですね、そもそも知らなかったです・・・。

岡田さん「琵琶湖側に住んでいる方は特にだと思います。県境側の方からするとちょっと役に立たないかもしれません。滋賀特有かもしれないですね、琵琶湖が大きいから。湖南、湖東という感じで東西南北で文化や方言も違うので」

──そうなんですね・・・でも滋賀県民にとってはすごく便利な文具ですよね。

田中さん「お役立ち文具であってほしいので、おもちゃで終わりたくないって思っていて。楽しくて買うんだけど、やっぱり役立ってもらいたい。なので実用性は意識しています」

いよいよお2人に「所持率0%」の結果を打ち明ける

──実は今日、滋賀の方にみなさんどういうシチュエーションで使っているのかなと調査したんですが・・・20人聞いて、誰も持っていなくて・・・

岡田さん「え~!ほんとですか!(泣)。いや、でもね・・・びわこ文具を売っている場所って、滋賀県民がなかなか行かないところなんですよね」

──えっ、どういうことですか?

田中さん「びわこ文具は『ワンコインで買えるお土産文具』というコンセプトで。その旅の思い出を振りかえることができるような自分用のものだったり、滋賀に行った記念のお土産になればという想いで生まれたんです」

岡田さん「なので、主にサービスエリアや道の駅、宿泊施設の売店、観光地のお土産売り場に置いていただいてる状況です。県外の方が目に付くところには置けるようになったんですけど、そしたら滋賀県の方に『どこで買えるの?』って。コクヨショーケースという通販サイトでは全商品買えるし、実は滋賀県内では140店舗以上買えるところがあるんですけど、ご存知ではない方もいらっしゃるようで、県民の方が日頃文具を購入されるお店での展開を強化中です!」

京都や大阪と比べて、地元を誇りに思えない!? 滋賀県民

──うおーなるほど・・・

田中さん「びわこ文具をきっかけに県外から滋賀を訪れてくれる方もいらっしゃるようで、本当にうれしくて幸せです。ですが、滋賀県民にも浸透してほしいんです。びわこ文具は、地元に貢献できる事業をしたいと琵琶湖・淀川水系のヨシを活用して琵琶湖の環境・生態系保全を目指す『リエデンプロジェクト』の一環なんですけど、滋賀の方に全然知らないし見たこともないって言われて、すごく寂しいなと思って」

岡田さん「滋賀って京都や大阪に比べて、なかなか自分たちのことを誇りに思えないという意識があると思うんです。でも滋賀には日本一の湖がある。びわこ文具が生まれた背景には、もっと誇りを持って欲しいという思いも・・・」

──でもテンプレート第2弾の「とび太くんテンプレート」、第3弾の「戦国テンプレート」など・・・滋賀名物、めちゃくちゃあると思いますが。

田中さん「そうなんですよ! 次の朝ドラのテーマになる信楽焼もですし、来年の大河ドラマが楽しみな歴史的観光資源も豊富なうえ、伊吹山、瀬田シジミ、近江牛、白鬚神社に・・・花火もすごく綺麗ですし、蛍、びわパール、カヌー、しゃくなげとか。あまり表立っては言わないですけど、滋賀県民は滋賀の好きなところが山ほどあるんです」

──ドバドバ滝のように出てきますね!(汗)

田中さん「それも県民性だなと思っていて、琵琶湖しかないっていうんですけど、話していくとたくさん好きなところ持ってるんですよ。当たり前すぎて気づいてないだけで、とび太くんも私は商品化できるものと思ってなかったですし。びわこ文具もひとつひとつ、実はこんなとここだわりあるんですって言いたくてしょうがない。ほんと、かめばかむほどおいしい滋賀なんですよ!」

──あっ、はい、話していてビシビシ滋賀愛感じてます!・・・ではぜひ滋賀愛ビンビンのテンプレート第4弾作ってください。名物・鮒寿司とかどうでしょうか?

田中さん「うわ~、鮒寿司!(メモをとりながら)おもしろいですね。どんな意見もできる限りトライしていく姿勢です!(笑)」

・・・

エコ文具で環境にやさしく、しかも8cmまでならちゃんと定規として使える「びわこテンプレート」。滋賀県民のみなさま、「コクヨ工業滋賀」さんの強すぎる愛を受け取ってみませんか?

(Lmaga.jp)

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