兵庫県・芦屋市で暮らす子どもたちが、グルメな理由とは?

兵庫県芦屋市の公立小学校8校では、毎年秋に食育カリキュラムとして「味覚の授業」がおこなわれる。教えるのは、市内の有名レストラン8店のシェフ。ミシュラン星獲得店や予約の取りにくい人気店のシェフから、子どもたちがどんなことを学ぶのか、芦屋市立岩園小学校6年生の「味覚の授業」をのぞいてみた。

今年、同校の「味覚の授業」を担当するのは、ハムやソーセージ、惣菜などを販売する「メツゲライクスダ」のオーナー楠田裕彦シェフ。ドイツやフランスでの修業経験を活かした本場の食肉加工品が評判の店だ。まず、豚の腸にスルスルとひき肉が詰められていく生ソーセージ作りが映像で紹介され、子どもたちは「あれ腸なの?」という驚きとともに、ソーセージが完成する様子に歓声をあげた。

授業の終盤、各テーブルに薄くスライスしたサラミが配られた。肉・塩・香辛料と少しのニンニクのみで半年間熟成させた、楠田シェフの店でも一番クセの強いサラミだ。「20~30回ぐらいよくかんでください」とシェフ。子どもたちは、熟成のにおいを確かめたあと口に入れ、何回もかんで味の変化に集中した。

「しょっぱかったけど、最後は生ハムみたい」「においが気になったけど、食べてみたらおいしかった」「最初はからかったけど、かんでるとからくなくなっておいしくなった」など、子どもたちからはどんどん感想が出てくる。楠田シェフは「添加物を入れなくても、塩があれば腐らない伝統的な食品を味わってもらいたかった」と話す。筆者も食べてみたが、独特な発酵のにおいがあり、口に入れると最初は確かに塩辛く感じるが、すぐに旨みがあふれ出て、最後は甘さを感じるくらいにまで変化した。

「味覚の授業」は、フランス発の食育の取り組み

「味覚の授業」は、1990年にジャーナリストで料理評論家のジャン=リュック・プティルノー氏とパリのシェフたちが一緒になり、フランスで食育学習の場「味覚の一日」を開催したことがもとになっている。日本では2010年に「味覚の一週間」がスタートし、「味覚の授業」はその一環。2017年は全国で239校が実施しており、芦屋市だけが公立小学校全校で取り組み、食育カリキュラムとして毎年授業をおこなっている。

子どもの食育に前向きなシェフたちがボランティアで参加する授業は、味の基本となる「塩味」「酸味」「苦味」「甘味」、そして日本ならではの「旨み」を、五感を活用して味わう体験授業をベースに、シェフの得意分野でアレンジされる。フランス料理「メゾン・ド・タカ芦屋」の高山英紀シェフやイタリア料理「オステリア・オ・ジラソーレ」の杉原一禎シェフ、京料理「たか木」の高木一雄シェフらがプロの技を披露し、授業は大人も受けたくなるような内容だ。

授業が終わって、楠田シェフが6年生と給食を食べるために教室を訪れると、あっという間に子どもたちに取り囲まれて質問攻め。なかには「(お店の商品は)高いの?」とストレートに聞く子もいて、シェフは笑顔が絶えなかった。「味覚の授業」は、一流シェフから味の基本を学び、それを言葉で表現するという体験だけでなく、新しい食の味わいとの出会いや、地域で働くシェフと子どもたちとの交流の機会にもなっている。

取材・文・写真/太田浩子

(Lmaga.jp)

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