和歌山県立近代美術館で、日系移民画家の2人展

20世紀前半にアメリカで活躍した2人の日本人画家、国吉康雄(1889~1953)と石垣栄太郎(1893~1958)。彼らの画業を紹介する展覧会が、「和歌山県立近代美術館」(和歌山市)で12月24日までおこなわれています。

岡山県出身の国吉と和歌山県出身の石垣、彼らが20世紀初頭に移民としてアメリカに渡った目的は、お金を稼ぐためでした。しかし、渡米後に美術家を志すようになり、西海岸からニューヨークに移住して、「アート・スチューデンツ・リーグ」という美術学校で共に学びます。そして1920年代から活発に作品を発表し始めました。国吉の作品はメランコリックな雰囲気が特徴で、登場人物は複雑な表情を浮かべています。画面に描かれた象徴的な事物にメッセージを忍ばせ、間接的にメッセージを伝えようとしているのです。一方、石垣の作品はアメリカの社会問題や人種問題などがテーマで、政治や社会に対する直接的なメッセージに満ちています。

彼らが過ごした時代のアメリカは、黄禍論による日本人移民の排斥、大恐慌、戦争、戦後のマッカーシズム(共産主義者の抑圧)など、社会が激しく揺れ動いていました。そのため、政治色の強い作品を描いてきた石垣は1951年にアメリカから強制退去を命じられ、晩年を日本で過ごしました。一方、国吉は「ホイットニー美術館」で回顧展をおこない、ヴェネツィア・ビエンナーレのアメリカ代表に選ばれるなど華々しい成功を収めましたが、最後までアメリカの市民権を得られませんでした。

本展は、国吉の作品58点、石垣の作品38点をはじめとする美術作品114点と、関係資料47点で構成。2人が時代や社会とどう向き合い、どのような作品を残してきたかをたどります。折しも今、アメリカやヨーロッパで移民やテロの問題が起こり、日本の隣国でも戦争の危機が高まりつつあります。国吉と石垣の生き様は、現代の我々にとっても他人事ではないのです。料金は一般700円。

取材・文/小吹隆文(美術ライター)

(Lmaga.jp)

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