『ベルギー奇想の系譜展』、兵庫県立美術館で開幕

現在のベルギーとその周辺では、中世末期から「幻想絵画」と呼ばれるカテゴリーが脈々と受け継がれてきました。約500年にわたるその流れを紹介する『ベルギー奇想の系譜展』が、兵庫県立美術館(神戸市中央区)で、7月9日までおこなわれています。

作品の主題は、時代ごとに変遷します。15~17世紀の作家たちがキリスト教の価値観をベースに魑魅魍魎(ちみもうりょう)がうごめく世界を描いたのに対し、19世紀末から20世紀初頭の象徴主義の作家たちは、産業革命に伴う人間性喪失の危機感から架空の世界に救いを求めました。20世紀のシュルレアリスムは夢や無意識の世界を重視して、人の心の闇や内なる世界を追求。現代の作家たちの表現はもっと多様で、歴史、文化、美術史などを柔軟に取り込んで、それぞれの世界を追求しています。

幻想絵画は時代や洋の東西を問わず見られますが、学芸員の小野尚子さんによると「ベルギー美術は特にその傾向が顕著」だそうです。理由は「19世紀にベルギーが独立するまで何度も支配者が変わり、戦争を繰り返してきた歴史が影響しているのではないか」とのこと。幻想絵画の背景に、複雑な歴史を背負った内省的な国民性があるのは間違いなさそうです。

取材・文・写真/小吹隆文(美術ライター)

(Lmaga.jp)

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