都立の星・小山台最後に見せた意地安打

 「選抜高校野球・1回戦、履正社11-0小山台」(21日、甲子園)

 開会式に続いて1回戦3試合が行われた。初出場した21世紀枠の小山台(東京)は、0‐11で履正社(大阪)に完敗した。都立校としての甲子園初勝利はならなかったが、ノーヒットノーラン寸前の九回1死から、代打・竹下直輝外野手(2年)がチーム初安打を放ち、意地を見せた。アルプスを埋めた大応援団からは、大きな拍手が送られた。

 ほろ苦さが残る1時間48分の夢舞台。都立校として聖地初星は、またしても遠かった。小山台の主将でエースの伊藤優輔投手(3年)は「たくさんの方が応援してくれた。もっといい試合をしたかった」と振り返った。それでも、試合後のあいさつをするナインに、黄色に染まった三塁側アルプスから万雷の拍手が降り注いだ。

 大黒柱の伊藤が二回に5失点。押し出しを含む3連続四球で先制を許すと、最後は2番・辻に満塁被弾。一方で、五回までに8三振を奪っただけに「慎重になり過ぎた」と、試合の流れを決めたイニングを悔やんだ。

 だが、最後に意地は見せた。九回1死から代打・竹下の詰まった当たりは、三塁手の前にポトリと落ちるチーム初安打。執念が白球に乗り移ったような一打に「『ベースプラス2歩まで走れ』と言われていた。ずっと練習してきたことを出せたと思う」と、2年生は胸を張った。

 都心の狭いグラウンドで平日は1日90分の練習時間。厳しい環境から甲子園をつかんだ裏には、伝統の野球日誌の存在がある。部員が反省点や思いを記し、相互理解を深める。

 象徴的な存在が、06年に自宅マンションのエレベーター事故で亡くなった市川大輔(ひろすけ)さん(当時2年)。「あいつの書く日誌はすごかった」と福嶋正信監督(58)。チームを常に第一に考え、自分にも他人にも厳しかった日誌のコピーは、現在の部員にも受け継がれている。関西入り後も、1時間以上をかけて日誌を書き、自分と向き合う選手もいる。

 伊藤は初めて聖地の土を踏んだ1日を「とても長い、大きな1日だった」と表現し「出られたのは歴代の先輩たちがあってのこと。悔しい気持ちを糧に、夏にいい報告をしたい」と前を向いた。聖地で刻まれた貴重な記憶も、また紡がれる。それはいつか歴史的な1勝につながるはずだ。

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