ケイバ熱盛ブログ「ファインプレー」(3月5日)

 栗東・井上です。取材をしていると、時々こんなコメントを耳にします。「前走は落鉄していて…」。レース中に蹄鉄が外れて、思うように走れなかったということです。ランナーのスパイクに例えられるように、蹄鉄の役割はかなり重要。それこそ、蹄鉄を調整する装蹄師はミリ単位の仕事が求められます。

 落鉄で思い出すのが91年の桜花賞。5戦5勝の無敗で臨んだイソノルーブルが1番人気でした。今は存在しない抽選馬。当時、ワタクシは19歳でした。その強さをライブで見たくて、一緒に競馬新聞を作っていた悪友たちと、京都競馬場へ向かいました。ところが、発送時間になってもまったく走る気配がない。アナウンスはあったのでしょうが、人混みのスタンドでは耳に入らず、「落鉄らしいで」と教えてくれたオッチャンの言葉にざわついたのを覚えています。

 蹄鉄の打ち替えを拒んだイソノルーブルは、右前脚の蹄鉄がないまま走って5着に敗れました。レース前に戦意を喪失し、体力も消耗したでしょう。それでも、裸足でがんばった。不運な抽選馬に胸を打たれたのでした。

 続くオークスでは大外の20番からの逃げ切り勝ちですからね。なんとドラマチックなんでしょう。発売と同時に買いましたよ。青のメンコを着用したイソノルーブルのぬいぐるみを。

 先週のすみれSでも落鉄が話題になりました。勝ったディープモンスターがレース直前に落鉄。打ち替えることができて、レースも実力を発揮しました。「幸くんのファインプレー」とはレース後の武豊Jです。発走前にどんなことがあったのでしょう。

 「別にファインプレーじゃないですよ」。オットコマエな幸Jは謙遜しながらも説明してくれました。「ゲート裏の輪乗りで豊さんが、落鉄してない?って聞いてきたんです。ジッと見たけど、蹄鉄は付いているし、大丈夫そう。“大丈夫ですよ”と伝えましたが、豊さんが違和感を感じるんだから…と、3周ほど歩くのを見つめていたんです。そしたら、何か浮いている感じもする。だから、“係員に見てもらった方がいいかもしれません”と。係員が脚を上げたら蹄鉄が飛んでいったんです。付いているようで、付いてなかったんですね」。幸Jのひと言がなければ、そのまま走っていたかもしれない。そしたら、蹄鉄は途中で外れていたでしょう。裸足でも勝っていたか、どうかはわかりません。ただ、皐月賞出走を確定させる大きな1勝だけに、まさに“ファインプレー”でした。

 これから、蹄鉄に違和感を感じたジョッキーはみな、幸Jに確認するかも知れません(笑)。

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