【熊本地震】被災地のためにできること 物資・寄付・ボランティア…専門家に聞いた支援の心構え

 大きな災害が起きるたび、被災地の状況を目にして「何か力になりたい」「自分にもできることがあるのではないか」と感じる人は少なくない。一方で、「物資を送った方がいいのか」「現地へボランティアに行くべきなのか」「寄付ならどこに託せばいいのか」と、具体的な行動に迷う人も多いのではないだろうか。

 善意から生まれた行動も、被災地の状況や必要としている支援と合わなければ、かえって現場の負担になる場合がある。大切なのは、支援する側の「助けたい」という思いを、被災者に届く形へつなげることだ。

 災害ボランティアや市民活動について研究を続ける大阪大学大学院人間科学研究科の渥美公秀教授に、物資支援の注意点、ボランティアに参加する際の心構え、現地へ行けない人ができる支援など、個人ができる被災地支援のあり方について聞いた。

 -大きな災害の報道を見て、「被災地のために何かしたい」と感じる人は多くいます。こうした気持ちは、被災地支援においてどのような意味を持つのでしょうか。

 「いざという時には助け合える社会であること、そういう社会を創っていこうという雰囲気ができることで、被災地の方々の気持ちを支えていく意味があると思います」

 -「何かしたい」という思いがあっても、具体的に何をすればよいのか分からない人も多くいます。まず意識すべきことは何でしょうか。

 「声を上げにくい方々に注目したいと思います。高齢者、障害者、子ども、女性、外国人…挙げればきりがないですが、想いを馳せてみてください。そして、事情が許す範囲で一歩踏み出してみよう、上手く行かないかもしれないけれどやってみようという方向を意識して考えてみるといいと思います」

 -善意で送った支援物資が、場合によっては被災地の負担になってしまうことがあると聞きます。なぜそのようなことが起きるのでしょうか。

 「何が必要かということが明らかな場合、それは多くの支援者にも明らかに感じられるので、その物資が重複して被災地の負担になる場合があります。何が必要かわからない場合には、それを確かめずに送ると現地では不足していなかったり、当座は不要であったりする場合があります。その対応が被災地の負担になることがあると思います」

 -個人が被災地へ物資を送りたい場合、どのような点に注意すればよいでしょうか。

 「現地と連絡を取り合っているNPOなどの支援団体に問い合わせるといいと思います」

 -「不足しているものを何とか届けたい」と考える人に向けて、物資支援で大切な考え方を教えてください。

 「そのお気持ちは大変尊いものだと思います。ただ、不足しているのかどうかの判断、不足していることが多くの人に知られているかどうかの判断などが必要となり、個人ではなかなか判断しづらいものです。スタッフを派遣するなど現地と交流している人たちに尋ねるのが一番だと思います」

「また、必ずしも不足しているとは意識されていないものもあります。例えば、私どもの団体(日本災害救援ボランティアネットワーク)では、地元の企業様にご支援頂いて和菓子をお届けしたことがあります。和菓子が不足するという意識はないでしょうけれど、ホッとする時間・場所を作れることがあるからです」

 -被災地へ行ってボランティア活動をしたいと思った場合、個人はまず何を確認すべきでしょうか。

 「まずご自身の安全(健康面のチェック、緊急連絡先など情報面のチェック、ボランティア保険への加入)を確認したら、被災地でどういう活動が展開されているか、予定されているかを調べます。NPOの動きや、現地の受け入れ体制など情報を集めて、ご自身に合った活動をしているところに参加していく姿勢で。例えば、力仕事が得意、高齢の方々が心配、障害のある方々が心配、子どもが我慢していないかが心配、外国人はどうしているだろう、あるいは自分は何も特技がないのでとにかく何でもやってみようなど、ご自身が気になることから考えてみるとよいと思います」

 -災害発生後、多くの人が一斉に現地へ向かうことには、どのような課題がありますか。

 「時間の範囲によります。災害発生直後には救援組織が動きますのでそれの邪魔をしないことは当然です。しかし、ある程度の時間を経たら、多くの人が現地に向かうことはよいことだと思います。多様な方々が多様なお考えをもって多様な活動を展開することから多様な被災者が助かり、多様な救援経験が今後の社会に役立つと思うからです。一斉に現地に向かうと混乱するかもしれないと危惧するのはわかりますが、多様な人々が現地に向かうことを過度に抑止しないことはとても大切なことだと思います」

 -専門的な経験がない一般の人でも、災害ボランティアに参加することはできるのでしょうか。また、その際に心掛けるべきことは何でしょうか。

 「一般の人々は経験がないと考えがちですが、当然ながら、日常生活において、多様な人たちが多様な経験をされてきています。災害専門ではないから役立たないと決めつけることはないと思います。例えば、日頃から自宅で高齢者の介護に当たっていた方は高齢者への対応という経験をお持ちです。近所の子どもたちのスポーツを支えてきた方は子どもについてよくご存知です。経理の方は経費の使い方にヒントをお持ちかもしれません。大学生はその若さで動き回って下さることが頼りになるかもしれない。なんであれ、災害専門ではなくても、ひょっとしたら役立つかもしれないと思います。その上で、『確かに私の経験など何の役にも立たないかもしれないし、経験が活かせるなどという場面はないかもしれないけれど、私自身が被災者の傍に行くことが何かの役に立つかもしれない。役に立たなかったら帰ってくればいい』というふうに考えてみてはどうでしょうか」

 -ボランティアに参加する側が、自分自身で準備しておくべきこと(交通手段、宿泊、食事など)はありますか。

 「交通手段、宿泊、食事など全て準備しておくべきだと思います。相談されるNPOなどでは交通手段を提供していたりしますので参考にしてください。あとは現地で臨機応変にというイメージです。例えば、食事を持っているけれど、避難所の方が炊き出しを一緒に食べようと仰れば(炊き出しをしている団体に確認した上で)一緒に食べて、苦労されているお話を聞いて差し上げるといったこともあります」

 -遠方に住んでいるなどの理由で被災地へ行けない人には、どのような支援方法がありますか。

 「寄付を考えること、現地に行っている人々を非難しないことの2つでしょうか。寄付については、ご寄付をしていただくだけでもありがたいことではありますが、その寄付がどのように使われるかをチェックしてみるといいと思います。ご自身が支援したいと思っている事柄にマッチしていればよいと思いますし、何を支援できるかがわからない場合でも自分のお考えとして信頼できると判断される団体にお任せするというご寄付もいいと思います。現地に行かずに現地に行っている人たちのことをSNSなどで非難することは、支援にはならないということを知って頂きたいと思います」

 -寄付や募金を考える場合、支援先を選ぶ際にはどのような点に注意すればよいでしょうか。

 「寄付が被災者に向けて使われるのか、支援者に向けて使われるのか(前者は寄付金、後者は支援金と呼んだりします)、この区別には意識的であった方がよいかと思っています。その上で、寄付の使われ方が寄付をする人の趣旨に合っているか、特定の支援ではないという場合、使途についてその団体が決めることに同意できるかといったことに注意していただければと思います」

 -情報発信や日常生活の中でできる支援には、どのようなものがありますか。

 「被災者はもちろんのこと、現地で活動されている方々へのリスペクトの気持ちをもって過ごしていくことができればと思います。そして様々な情報や日常の場面で、折に触れて被災地のことを考えてみるということでしょうか。そして、自分の関わる地域での防災へと関心を向けて下さればと思います」

 -災害が起きた時、「自分にも何かできることがあるのではないか」と考える人に、一番伝えたいことは何でしょうか。

 「きっとあります!いつ何ができるかどのようにできるか、この機会に積極的に考えて一歩動いてみましょう」

 -今後、大きな災害に備えて、市民一人ひとりが普段から意識しておくべきことを教えてください。

 「日頃大切にしていること(有用か、効率的か)だけにとらわれず、こんなふうなやり方もあるのではないかと考えてみる。その際、声を出しにくい方々の声をどのように聴いて動いていくか、常に自分に問いかけるようにしておきたいと思っています」

(よろず~ニュース・田中 靖)

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