空駆ける亡き息子の自転車、ダンプ&ヘリ、親子の絆感じるデザインも「想いを込めたお墓づくりコンテスト」
お盆も近づく夏休み時期は、家族でお墓参りに行く機会も多いだろう。四角い石を積み上げた一般的な和型のほかにも、近年はこだわりや趣向を凝らしたデザイン性の高いお墓も目立つ。全国約150の石材店で構成する一般社団法人「全国優良石材店の会(全優石)」は、今年も全国から募集したユニークなお墓による「想いを込めたお墓づくりコンテスト」を開催、入賞作を発表した。
形やデザインだけでなく、家族や故人の思い入れ、エピソードを紹介することで、より心のこもったお墓づくりの参考となるように開催。今年で32回目を迎え、応募25人の中から大賞1人と特別賞2人、入賞8人を決定した。
特別賞に選ばれた「父の希望に応える洋型お墓」(三重県)は、古風だと思っていた父から「斬新なデザインのお墓を考えてくれ」という言葉に驚きながらも、願いに応えた力作。高級墓石材とされる庵治石を生かし、書家の書いた文字を縦に刻む迫力ある仕上がりで、父本人も出来栄えに目を潤ませていたという。お墓づくりを通して、実は斬新でハイカラな感性を持っていた父の一面を初めて知ったという親子の絆も感じさせるお墓だ。
もう一つの特別賞は、「ダンプカーと重機、ヘリコプターの並んだお墓」(北海道)。幼いころからダンプカーが好きだった故人は、ボロボロの中古ダンプを手に入れて個人運搬業を開業。懸命に働いて事業を拡大し、タイヤショベルも導入。ヘリコプター免許も取得して精力的に活動していたという。にぎやかで楽しいお墓には「あの世でも、父には想い出の品々でどっぷり浸ってもらいたい」という思いが込められている。
大賞は「息子のサイクリング写真を刻んだお墓」(長野県)。サイクリング中に交通事故で亡くなった高校2年生の息子のために、亡くなる数日前に撮った写真を墓碑に刻んだお墓だ。あおむけ姿勢で空を地面に見立てたように自転車をこぐ天地逆のような写真が透かし彫りされている。山の斜面を開いた景色の良い傾斜地に立ち、家名の代わりに自転車専用記録装置に残っていた「1133km」を書道が得意という弟が記した。亡き息子のちゃめっ気あふれる姿を刻み、父からは「今も青空を駆けているね。走り疲れたらいつでも帰っておいで!お父さんとお母さんはいつまでも待っています。」というメッセージも寄せられている。
入賞作には、岡山でしか採石できない萬成石を敷き詰めたお墓やゴルフ愛好家だった故人のためにグリーンを模した墓石、大工だった父のために木工技術の木組みを思わせるデザインなど、いずれも個性的でユニーク、思い入れのあるお墓が並んだ。
全優石の吉田岳会長は「人が亡くなることは、それがどなたであっても、遺された方々にとって大変悲しく、つらいことです。とりわけ、若くしてお子様を亡くされたご両親のご心中を思うと、胸が締め付けられる思いがいたします。お墓づくりに向き合われるまでに5年の歳月を要したというお話からも、ご両親の深い悲しみと、ご子息への愛情の大きさがうかがえます」と大賞について話す。
コンテストについては、「単にお墓の形状やデザインの優劣を競うものではありません。そのお墓が建てられた背景や、そこに込められたご家族の想いを大切にしています」と強調。「私たちは、お墓は単なる『遺骨の置き場所』ではないと考えています。故人への想いや思い出が詰まった場所であり、ご家族の悲しみに寄り添い、心を癒やす場所でもあります。そして、そこへ足を運べば、亡くなった大切な方に会える場所でもあるのだと思います。そのような、家族の想いや愛情が込められたお墓づくりがあることを、一人でも多くの方に知っていただきたいとの願いから実施しています」と開催の意義を説明する。
形や素材はさまざまでも、そこに込められているのは、故人を大切に思う家族の気持ちにほかならない。帰省して家族や親類と顔を合わせることも増える夏。日々の暮らしの中ではなかなか語る機会のない故人との思い出やご先祖様から受け継いできたつながりに、思いを巡らせてみるのもよいだろう。お墓は手を合わせる場所であると同時に、大切な人との絆をあらためて感じる場所でもある。
(よろず~ニュース・田中 靖)
