酸素10%以下&気温はマイナス30℃! 南米最高峰6960mに「スーツ」で登頂目指す名物社長、秘密兵器を導入
オーダースーツの製造・販売をする「オーダースーツSADA」の佐田展隆社長(51)がこのほど、都内にあるトレーニング施設「ミウラ・ドルフィンズ」で低酸素トレーニングを取り入れたことを明かした。佐田氏は今年12月26日から、南米最高峰・アコンカグアに自社のスーツを着た状態で挑戦することを公言している。
佐田氏は「オーダースーツの良さや機能性をいろんな人に知ってほしい」という一心で、2013年から自社製品を着用してさまざまな“ムチャ”な挑戦を行ってきた名物社長。既に日本最高峰の富士山(3776m)だけでなく、西ヨーロッパ最高峰・モンブラン(4806m)、アフリカ最高峰・キリマンジャロ(5895m)などの登頂にスーツを着た状態で挑戦し、成功を果たしている。
ただ、前回のキリマンジャロ挑戦時に「最終アタックの5500mを超えた時に、頭がグワンとして、めちゃくちゃ眠くなった。ほぼ気絶ですよ」と山の脅威を初経験。そのため「(標高が)プラス1000mも増えるので、次はちょっとやばいかもなと。今回はしっかり体を慣らしてから行きたい」と万全を期して施設の利用を決断した。
アコンカグアは、アルゼンチンとチリの国境付近に存在する南米大陸最高峰の6960m。お笑い芸人のイモトアヤコがテレビ番組で挑戦し、登頂直前で断念した山としても知られる。山頂付近の環境はマイナス30度近くを記録。酸素濃度は8.5%と、地上(約21%)の半分以下で、挑戦者の登頂成功率は30%以下と厳しい条件になっている。
利用するミウラ・ドルフィンズは2013年に当時最高齢の80歳(ギネス記録)で登頂に成功した三浦雄一郎氏と、プロスキーヤーで医学博士号を持つ次男・豪太氏が代表を務めている施設。最大で標高6000m付近と同じくらいの低酸素状態(10%前後)が再現できる部屋が完備されている。佐田氏が目指すアコンカグアに近い環境を、東京都内でインストラクターの指導の下、運動や睡眠訓練を行うことができる。
挑戦に備えて「エベレスト(8848m)にも持っていける靴と、寝袋を新調しました」と戦う装備も万全。寒さに耐えるため、アウターは必須だが「インナーにはスーツを着ていきます」と挑戦の姿勢は変わらない。
たくさんの登山家たちを指導してきた同施設のインストラクター・安藤さんも「スーツを着てアコンカグアに挑戦する人は初めて見ます」と驚きの挑戦となる。記者も施設の許可を得て、上下セットアップのスーツよりは楽な服装で標高4500m付近の酸素状態(11%前後)に設定された低酸素室に突入した。
対面取材のため使い捨てのマスクを付けて入室したが、入った瞬間に息苦しくて思わず外してしまった。見た目上は壁一枚を隔てているだけなのだが、素人でもわかる“酸素の薄さ”が感じられた。すぐに視界の端が外側から内にぎゅっと押されているような視野が狭くなる感覚があり、思考も定まらなかった。えも言われぬ眠気のようなものが記者を襲っていた。10分程度の滞在だったが、山の怖さの“一端”を体感した気分だった。
そんな環境下でも、佐田氏はYouTube用の動画をまわしながら、カメラに向かって一人で話し1時間以上も運動を実施。「これくらい(4500m)の感覚であれば、何も問題はないですね」と話し、これまで数々の名峰を登ってきたという実力を感じさせた。
挑戦に向けて佐田氏は「(登頂成功率の)30%に入らないといけない。簡単な山ではないですよ」と油断はない。「行く前の準備がすごく大事なので、この施設のありがたさはすさまじい。(三浦)雄一郎さんに感謝しながら行ってきたい」と感謝を述べつつ、「今回(アコンカグアを)スムーズに登って、いつの日か雄一郎さんが80歳で登ったエベレストに行きたいですよね」と次回以降の挑戦も見据えた。
(よろず~ニュース・髙石 航平)
