ピラミッドに観音様にレコードプレーヤー型も!「想いを込めたお墓づくりコンテスト」大賞決定
日差しまぶしい夏休み。郷里へ帰省し、家族でお墓参りに行く機会も増える時期だ。葬送の多様化の中、「墓じまい」という言葉を聞くようになって久しいが、お盆のお墓参りは今も変わらず夏の風物詩。墓地を見渡せば、一風変わった墓石の姿も。全国約200の石材店で構成する一般社団法人「全国優良石材店の会(全優石)」はこのほど、全国から募集したユニークなお墓による「想いを込めたお墓づくりコンテスト」を開催、入賞作を発表した。
形やデザインだけでなく、家族や故人の思い入れやエピソードを紹介することで、より心のこもったお墓づくりの参考となるように開催。今年で31回目を迎え、応募26人の中から大賞1人と特別賞3人、入賞7人を選んだ。
特別賞の「『ありがとう』を刻んだお墓」(青森県)は、自身の旅行中に急逝した父への思いを込めたお墓。帰りのチケットを急いで取ったものの間に合わず、娘のランドセル姿を見せたい、話す場所がほしいという思いから建立した。父の生きた証しと父への感謝の気持ちを込め、墓誌には故人の好きだったアサガオの花をあしらっている。
「アナログのレコードプレーヤー型」(埼玉県)は、ステレオ製作に63年間従事した“匠(たくみ)”のこだわりをカタチにした力作。デジタルにはない音の持続性を感じさせる盤面に「感謝」の言葉を、中央のラベルシールには真言宗の梵字が刻まれている。
「観音様と蓮のお墓」(長野県)は、4人の子供を育て上げ、孫に固まれ「さぁこれから2人で人生を楽しもう」と考えていた直後、病に倒れ、若くして亡くなった妻をしのんでのデザイン。家族の中心だった故人の姿を観音様に重ね、「観音様が手を開いていて全てを包み込んでくれるようでホッとする」と好きだった蓮の花と融合させた。
大賞に選ばれたのは「永遠を象徴したピラミッド型」(山口県)。ピラミッドは古代から何千年も風雨にさらされながら、それでも崩れずに残ってきたことから、静かで芯のある父を重ね合わせて建立。故人が過ごした時間、家族と交わした言葉、支えてくれた日々、そうしたすべての思いが込められている。
全優石の吉田岳会長によると、近年の傾向として、より個性的なデザインや明るい色調の石材を使用したお墓が増えているという。また、核家族化が進み、加えて日本人の価値観が多様化するのに伴い、「お墓を、今一緒に暮らしている自分たち家族のあの世の住まいと考えたり、夫や妻、子など特定の個人をしのぶモニュメントと考える方が増えてきております。そうした方は、親戚などに気兼ねせず、自分たちの価値観や好みでお墓を建てるため、個性的なお墓が増えている一因になっているようです」と感じている。
一方で、故人を思う気持ちは昔も今も変わらない。吉田会長は「ご先祖様への感謝でお墓を建てられる方も、親や子、配偶者をしのんでお墓を建てられる方も、大切なことは、どれだけお墓に眠る方に対して気持ちを込められるかではないでしょうか。そうして建てられたお墓は、お墓に眠る方の慰霊だけではなく、残されたご家族にとっても心の癒しとなり、また家族の記憶をつなぐ大切な場となります。そうした素晴らしいお墓づくりをされている方がたくさんいらっしゃいます。すてきなお墓づくりのことをより多くの方に知っていただければ幸いです」とコンテスト開催の意義を話す。
(よろず~ニュース・田中 靖)
