入手困難マンガを書籍化「コミックパーク」がサービス終了 電子書籍に押され売上5%以下に

 “さらば絶版!コミックスを一冊からでもつくってお届け”をキャッチコピーに、入手困難なマンガ作品を個人の注文で書籍化する「コミックパーク」が20日正午をもって、サービスを終了する。古書店で高価で売買される絶版作品、単行本になっていない作品を書籍化し、マンガファンだけでなく、著作権料を手にする出版社と作家側にも意義深いサービスだったが、電子書籍の波を受け役目を終えた。コミックパークを立ち上げ、運営してきたコンテンツワークス社の荻野明彦氏に話を聞いた。

 2002年6月にサービスを開始。コミックパークのウェブサイトで受注した作品を、カバーのないコンビニ本のようなペーパーバックに製本し、送付する。販売価格は1冊800円から1000円程。送料別。市販の単行本より割高だが、古書店で高額で取引される作品や、絶版作品、単行本化されていない作品を、1冊単位で書籍化するオンデマンド出版は画期的だった。

 スタート時は講談社、小学館など数社のみだったが、最盛期は20社と契約(現在は10社)。出版社が権利を手放していた「サイクル野郎」(1971~79年「少年キング」連載)は作者の庄司としお氏と契約し、全37巻の作品がヒットした。未収録話を残して単行本6巻で止まっていた「新聖モテモテ王国」(作・ながいけん、1996~2000年「少年サンデー」連載)は、第7巻を新たにオンデマンド出版し、当たった。また、数量限定発売だった4枚組DVD-ROM「赤塚不二夫漫画大全集」を全271巻の形で書籍化、漫画の神様の膨大なエピソードを自ら選び製本する「手塚治虫オンデマンドマガジン」サービス(現在は終了)などを展開。作家から持ち込まれた作品を初めて書籍化することもあった。

 荻野氏は「絶版をなくしたい、という気持ちで始めましたが、当時はここまで電子書籍が一般的になるとは思いませんでした」と振り返った。近年は絶版作品をはじめ、古書で高額取引される作品も電子化されている。「新星モテモテ王国」「サイクル野郎」など、コミックパークでヒットした作品も電子化され、値段が割高なペーパーバッグ版は苦しくなった。売上は全盛期の2007年頃の5パーセント以下だという。同サービスが書籍化してヒットしなかった作品の中には、電子書籍になっていないものもあるが、これらのマイナー作品は再び表舞台から消えることになる。

 荻野氏は「文化的な意義とビジネスは違うと学びました。20年前はマンガを(スマホなどの)画面で読む文化はありませんでしたが、ものすごいスピードで時代が変わりました。また、媒体を問わず新しい作品が次々に生まれるので、以前よりも古いコミックを懐かしむ余裕がなくなってきたようにも感じます」と語った。それでも、紙の本を求める声は根強い。コミックパークで培った製本ノウハウ等は、自費出版や同人誌などの分野で、ビジネスとして生かされるという。

(よろず~ニュース・山本 鋼平)

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