ザ・ドリフターズの高木ブーとサザンオールスターズのベーシスト・関口和之が「ウクレレ」という楽器を通して固い絆で結ばれている。そう実感させられるライブが横浜であった。両者を含む７人編成のバンド「１９３３ウクレレオールスターズ」が３月２０日にビルボードライブ横浜で開催した「ウクレレ七福神の来港！～ヨコハマに春がやって来た」と題した単独公演でのやり取りの中で、高木は関口のサポートと共に「１００歳現役」を宣言。また、関口は高木父娘に贈った曲に込めた思いを明かした。

　高木が生まれた１９３３年をバンド名の冠とした同バンドは２０１８年に結成され、高木（象徴）、関口（キャプテン）、野村義男（ウクレレ王子）、荻野目洋子（歌姫）、分山貴美子（口笛女王）、はたけやま裕（カホン家元）、ヤナギマン (バンマス)という構成（カッコ内は愛称）。１９９０年代、英国の音楽集団「ザ・ウクレレ・オーケストラ・オブ・グレート・ブリテン」の来日公演を機に交流が始まった高木と関口の間で、２０年以上も温めて具現化した夢のバンドだった。

　高木は「イギリスからウクレレ・オーケストラ～っていうのが来て、その時にね、日本からゲストに呼ばれたのが（ウクレレ漫談家の）牧伸二さんと僕だった」と振り返る。来場していた関口と連絡を取り合う仲となった高木は「関口さんに『こういうの、やりたいね』って言ってたのが、このような形になりました」と語り、関口が「お待たせしましたが、こうしてライブもできています」と感慨に浸ると、野村が「楽屋の風景を見てるみたいですよ」と会場の笑いを誘った。

　高木は３月８日で８９歳になった。８０代ラストイヤーの幕開けをライブで本格始動。関口に今後のビジョンを聞かれると、高木は「ここまで来たらね…。ハワイに１００歳で現役のウクレレ奏者がいたんです。もうお亡くなりになったけど、その人は１００歳でやられてた。それ、いいね！」と１００歳現役宣言。その一方、高木は「あと１１年あるんだよね…」と現実に戻ったが、関口は「まだ、１１年もあるんですから、いろんなことができますよ」とエールを送った。

　高木は「何、やろうか？でも、こういう時世だから、うちで座ってテレビ見てるだけよ。お尻にタコできちゃう。僕、時代劇にこってんの。『鬼平犯科帳』とか…」と日常を明かすと、関口は「いや、それはお休みの時間で、ブーさんは結構忙しくされているんですよ。ユーチューバーにもなったし、連載（ライター・石原壮一郎氏が構成を担当する介護ポストセブン『高木ブーのアロハな日々』）も持ってるし。この夏も（ライブ等で）相当忙しくなると思います」とフォローした。

　ステージでは、ゲスト・つじあやのと荻野目がザ・ピーナッツの「恋のバカンス」をデュエットするなど趣向を凝らした内容で進行。アロハ姿の高木はハワイアンソングの「珊瑚礁の彼方に」や「ブルーハワイ」で美声を披露した後、一人娘・かおるさんとの間柄に着想して、関口が作詞作曲したオリジナル曲「パパの手」が紹介された。

　関口は「高木さんの娘さんは務めていた会社を辞められて、近年はお父さんのマネジメント的な仕事をされています。（結婚時には）お父さんと一緒に住んでくれる人という条件にぴったりの人を見つけましてね」と紹介。さらに、関口は「僕の子どももそうですけど、小さい時は常に手をつないで歩いていたりとか、散歩に行ったりとかしてるんですけど、そのうち、『全然、手をつないでないな』という時期になって、『この先、また手をつなぐことがあるんだろうか』ということを考えると、『ある程度、年老いて、お世話をしてもらう立場になった時に、もしかしたら手をつないでくれるんじゃないかな』という考えがふと浮かんで曲を作りました。『ブーさんのために作りましたよ』って（本人に）持っていったんですけど、ブーさんには『難しいよ、これ。簡単にできないよ』って言われまして（笑）。それでもブーさんが歌ってくれてます。『パパの手』という曲です」と思いを語った。

　高木は、娘夫婦と孫の高校生「コタロウ君」と３世代４人家族で暮らす。「この曲、歌うの難しいんだから」と照れながら、思いを込めて歌い上げた。

　１５歳から始めたウクレレ演奏でミュージシャンとしての本領を発揮しつつ、関口に「象徴です。高木ブー！」と舞台でメンバー紹介された際には、椅子に座ったまま目を閉じて“居眠り芸”を披露。関口から「ブーさん、寝てる場合じゃないですよ」とツッコまれ、荻野目が肩を揺らして起こすという一幕でコメディアンの姿も体現した。アンコールはドリフターズの「いい湯だな」。高木の「ビバノンノン」の掛け声が響いた。

　新たな目標に掲げた「１００歳芸人＆ウクレレ奏者」への道は、まだ始まったばかりだ。

（デイリースポーツ/よろず～ニュース・北村 泰介）