文字サイズ

市川猿弥

歌舞伎座の「義経千本桜 六月大歌舞伎」の『道行初音旅』武蔵坊弁慶(左)と『渡海屋/大物浦』逸見藤太を演じる市川猿弥(C)松竹
2枚

 澤瀉屋一門の中でも、芝居と舞踊の上手さが一際目をひく市川猿弥。人柄がそのまま表れたような明るい芸質で、敵役などでも独自の芸域を確立している。児童劇団から歌舞伎の子役として活躍していたが、三代目市川猿之助(現・猿翁)に認められ、部屋子に。以来、研鑽を重ね、一門の舞台にはなくてはならない存在となった。一門以外の出演も多く、その確かな実力を見せている。6月は、歌舞伎座の「義経千本桜 六月大歌舞伎」(6月2日~26日)に出演。関西の舞台は、9月に大阪松竹座の「市川月乃助改め二代目喜多村緑郎襲名披露 九月新派特別公演」(9月17日~25日)に出演する。

 ◇  ◇

 四代目が猿之助を襲名され、スーパー歌舞伎II(セカンド)を作られ、澤瀉屋として盛り上がっているのを感じます。師匠が病床に臥して以降、四代目が襲名されるまでは、一門がそれぞれ別で舞台に出演させていただいていたわけですが、いまはまた集結することも多く、忙しく、活気に満ちています。昔からの仲間で気心が知れているのでやっていて楽しいですね。

 もちろん他の舞台に出演させていただいたときは、大先輩方のなさっていることを学んでいます。澤瀉屋は古典も独自の色があって、師匠が独自に変えたものも多いんです。基本は同じでも、それぞれに作り方が違うので、その色に染まりながらも猿弥独自のスタイルを出し、求められていることに応えなければ、次に呼んでいただけませんから。一門以外の舞台に出ることで、勉強させていただくことは多いです。

 以前は楽しくなければ歌舞伎じゃないという気持ちがありました。自分が楽しまなければ、お客様にも楽しんでいただけないと思っていたんです。でも最近はいい意味で歌舞伎は仕事なんだと、冷静に自分を見られるようになりました。もうすぐ50歳ですが、その年齢から来るものかもしれません。浮かれてはいられないというか、自分が楽しいとか楽しくないとかではなくて、自分がどんなときもお客様に楽しんでいただけるものを…と。もちろん50歳だといっても、この世界は大先輩方が大勢いらっしゃって、自分なんかはまだまだですけどね。

 これまで子供のころから歌舞伎をやってきて、ずっと突っ走ってきました。師匠の下に弟子入りして、どこか大人もいる遊び場があるといった感覚だったのかもしれません。歌舞伎への責任感が生まれたのは大学を卒業してからですね。

 師匠にはよく傷口に塩を塗られましたし(笑)、厳しい言葉をいただきました。弟子の中で右近さんは長男で、その下に僕ら弟子がズラリ。師匠は天才肌なんです。頭がいい方。口数は少なくて、若いころは怖い存在でしたよ。それでいて子供っぽいところもある。本当に天才という言葉がピッタリですね。師匠を何かに例えると…というよりも、師匠は師匠なんです。

 私は、実は踊りが苦手なんです。なのに上手いと言っていただけることがあるので、違うよ!と言いたくなる。僕は他に本当に踊りが上手い人を知っているし、見てきました。だから僕の踊りなんてまだまだなんです。上手いなんて言われると面映ゆい。

 ただ、もしピタリと振りや型、ポーズが決まっていると感じていただけるのであれば、それは昔、(藤間)紫先生に教えて頂いたことがあるからでしょうね。若いころに、踊りの大きな役をいただいたときに、振りの意味がわからなくて、「そこで手をかざして」「右足を出して」と教わってもピンとこないんです。そこで紫先生に「その振りで、一番きれいに見える位置を教えて下さい」とお願いしたんです。その振りの意味を理解すると同時に、振りを分解して、細かく教えていただきました。それ以来、きれいに見える型といったものがわかったような気がします。

 今年は新派で月乃助くん(喜多村緑郎)の襲名披露があります。1月の東京の襲名披露公演には出られなかったのですが、9月の大阪松竹座には出演させていただきます。月乃助くんとはずっと澤瀉屋で一緒にやってきて、仲もいい。(新派に正式入団したので)新派と歌舞伎に分かれますが、気持ちは変わらない。新派は歌舞伎と並ぶ松竹の柱の一つだし応援したいです。僕はもともと児童劇団の子役出身なんで、新派の芝居はやりやすい部分もありますね。一門からは他にも春猿らも出ますし、月乃助くんの襲名を盛り上げたいですね。

 ◇  ◇

市川猿弥(いちかわ・えんや)1967年8月15日生まれ。澤瀉屋。75年1月歌舞伎座『菅原伝授手習鑑』寺子屋の寺子四郎蔵で久住良浩の名で初舞台。78年5月に市川猿之助(現・猿翁)の部屋子となり、南座『加賀見山再岩藤』の志賀市ほかで二代目市川猿弥を名のる。98年7月歌舞伎座『義経千本桜』の武蔵坊弁慶で名題昇進。

関連ニュース

    編集者のオススメ記事

    歌舞伎最新ニュース

    もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(芸能)

    話題の写真ランキング

    デイリーおすすめアイテム

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス