【篠山輝信】観光ガイドで知る米軍基地の現実 沖縄を旅して「戦後」について考える

 【ボクのイチオシ】

 「本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知ってること(書籍情報社)」

 今年の8月15日は平成最後の終戦記念日だった。忙しい日常の中で常に戦争のことを考えることは現実的に難しいが、せめてこの日くらいは73年前に起こった戦渦に思いを巡らす。もちろん僕は直接戦争を体験したわけではないが、知れば知るほど、想像すれば想像するほどそのあまりの不条理さにやり場のない思いがこみ上げてくる。戦争で失われた全ての魂を悼み、今も深い喪失のなかで生きておられる方々に思いを馳せる。

 それと同時に僕は、今私たちが生きている「戦後」についても考えずにはいられなかった。先の大戦はもうすでに終わった過去の愚かな行為だと隔離し、現在と遮断することは僕にはできない。それは沖縄に行ったからだ。

 3年前に僕が出演している朝の情報番組の撮影で沖縄を旅した。那覇空港から沖縄本島を南北に貫く大動脈国道58号線を車で北上していくという内容だ。もちろん海はあまりに美しく、人はあたたかく優しく、食事はとても美味しい。沖縄を旅するのはいつだって最高に楽しい。しかし、この旅はそれだけではなかった。58号線を走っていると左右には頻繁に米軍基地のフェンスが見えてくる。観光の定番国際通りでサーターアンダギー屋さんに話を聞くと、ここでもオスプレイが通過する音が聞こえることがあるらしい。そして宜野湾市に行くと、僕の母の生家の数百メートル先の大学には2004年に米軍のヘリコプターが墜落していた。

 楽しいだけではない。どれも日本にあるアメリカ軍専用施設のおよそ7割が沖縄という小さな島に集中していることによる現実だ。そしてそれは言うまでもなく、戦後、私たち日本人全員が抱え続けている安全保障上の大きな課題だ。

 本書は沖縄・米軍基地の観光ガイドだ。基本的には僕が旅したように国道58号線を北上していくなかで見えてくるいくつもの米軍基地とそれに関連する施設や場所の様々な情報が写真つきで載っている。沖縄に観光で行くという方は多いと思うが、沖縄本島を旅行するほとんどの人がこの58号線を利用しているはずだ。

 こういう本を見ておくと、そのときに自然と目に入ってくる米軍基地等の景色から色々と感じることがあるかもしれない。基地問題のお勉強ではなく、あくまでも観光の延長としてまずは見落とさないこと。そういう入り方もありなのかもしれない。

 ◆篠山輝信(しのやま・あきのぶ)1983年12月10日、東京都出身。俳優。映画、舞台などに出演しつつ、NHK「あさイチ」のリポーターとして活躍。

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