【上田まりえ 23】家族にはいろんな形があっていい

 「夫のちんぽが入らない」-。この言葉を見て、皆さんはどう思いますか?実はこれ、本のタイトルなんです。

 その“ど直球”で衝撃的な言葉からはポップな印象さえ受け、話のネタになりそうだからと興味本位で手に取りました。ただ、表紙をめくり、最初の一文を目にした瞬間、その考えは変わりました。「いきなりだが、夫のちんぽが入らない。」-著者・こだまさんの私小説。交際を始めてから約20年になるけれど、どう努力しても性的に交わることができない夫婦。“入らない”ことで生まれる苦悩や数々の問題…進学、就職、結婚、出産などを通して、“普通”の家族とは何か?“普通”の人生とは何か?を考えさせられる一冊です。

 読むごとに、息が浅く、胸が苦しくなってきて…でもどこか共感できて、なぜだかホッとするところもあって。これだけタイトルと内容にギャップのある本を読んだのは初めてでした。読み終わって思ったのは、家族にはいろんな形があって、それでいいんだということ。“普通”というのは、周りが決めることではないということです。

 自分自身の話をすると、私たち夫婦は、ひとまず“週末婚”という形を選択しました。現在月~木曜の週4日、生放送番組を東京で担当しているため、夫の暮らす愛知県豊田市に帰ることができるのは週末の3日間。「旦那さんと離れていて寂しくないの?」と、よく心配の声をいただきます。

 ありがたいことに4月からレギュラーが増え、週6日東京で仕事をすることになりました。「社会人野球選手と結婚したのだから、食事面などのサポートをするべきでは?」「おかしいです。仕事を辞めたらどうですか?」「夫婦生活、破綻しないように!」「子供は産まないの?」-そういったご意見もいただきました。

 もちろん、すごく悩みました。夫に相談し、事務所のスタッフも交えて話し合いました。オーディションを受けるかどうか決断できずにいた私に、夫はこう言ってくれました。「野球のことは、ずっと一人でやってきているから大丈夫。お互い好きなことをやっているんだから、まずは頑張ろう」-夫なりの気遣いかもしれないし、私はただ自分勝手に甘えているだけなのかもしれません。

 ただ、自分たちらしい夫婦の形を作っていけばいいのだと思ったら、もう迷いはありませんでした。「“家内”じゃなくて、“家外”だね!」と、夫は私のことを言いますが、まさに現状は“主人”と“家外”。これが私たち夫婦です。

 本当は毎日一緒にいたいに決まっています。結婚したのにと思うと、一人の時間は一層寂しく感じられます。だからこそ、会えたときにはすごく嬉しいし、一緒にいるわずかな時間を大事にしようと思えるのです。いい選択をしたといつか思えるように、今と全力で向き合おうと心に誓いました。何事も悪い方に向かうために選択する人は、きっといないはず。

 本人たちにしかわからないこと。文字だけでは伝わらないこと。表面には見えていないこと。こういうものから世の中は形作られているのかもしれません。「夫のちんぽが入らない」-タイトルに惑わされず、ぜひ読んでみてほしい一冊です。

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