なぎら健壱 74歳、今年デビュー55年目「常に止まることなく」フォークの魅力を発信

 フォークシンガーのなぎら健壱(74)らが出演するオムニバス形式のコンサート「新宿南口フォーク集会2026」が、8月29日に東京・こくみん共済coopホール/スペース・ゼロで開催される。今年デビュー55年目を迎えたフォークの生き字引に、往年のフォーク全盛期と現状、今年の見どころと今もフォークを歌い続ける意気地を聞いた。

 フォーク全盛期に数多く開催されたオムニバスのコンサートだが、代表格だった大阪の「春一番」も昨年で55年の歴史に幕を下ろした。前身イベントから今年で14回目の本公演は、なぎらいわく「希少なもん」だ。

 「フォークがはやった時代は猫もしゃくしもフォークになってましたから、声をかければ簡単に集まった。ブームが去っちゃうと核にいた人たちがバラバラになっていくから、だんだんこういうコンサートができなくなったのが実情ですね」

 なぎらはオムニバスの魅力を「みんな切磋琢磨(せっさたくま)して我こそはっていう見せ方をしていましたよ。お客さんもみんなフォークの方に傾いてたからやりやすかったし面白かったし、出演者もみんな意識してないようで他の人を意識してましたからね」と説き、「お客さんが帰る時に『誰と誰は良かったね』と言う中に入っていたかった」と振り返った。

 当時のシーンは「アメリカの模倣でやってたのが日本に根付いて、抜きんでてくるヤツは自分の形を持ってましたからね。お客さんも目が肥えてますから、ホントに個性を持っていなきゃ難しかった時代でしたね」という熱いものだ。

 フォークのコンサートが今後も成立していくために「ダメなのは懐かしい懐かしいでやっちゃうこと。若い人たちに知らしめることがわれわれの課題だったし、もっと発信をしなきゃいけない」と訴えた。

 自身は昨年、ニューアルバム「下町ブギウギ」をリリースした。心がけているのは「詞を伝えること」。「聴いてて『いいねえその詞が』とか『詞が切りつけてくるね』というようなコンセプトでいたい」といい、新作は「まだ歩き続けてるよ、止まってないよ」という思いで制作した。都市生活者の感覚を歌う詞は永井荷風のようだ。

 「永井荷風は相当歩きましたからね。世間を見る目を持ってたし、好奇心が強かったと思う。そういうふうにわれわれもありたい。机上で書くよりも、足で見て街を歩いて感じ取ってというような作り方をしなきゃダメだと思いますよ」と詞作の哲学を述べる。

 74歳のなぎらは「トボトボでもヨボヨボでもいいけども常に止まることなく歩いてはいきたい」と語り、8・29に向けて「(大塚)まさじも加奈やん(加奈崎芳太郎)も(中川)五郎も友川(カズキ)もアリちゃん(松田幸一)もみんな知って50年だもんな。みんな個性をぶつけていくと思いますから、見逃すなよってことですかね。しのぎ合いを感じ取ると面白いと思いますし、それを味わってくれですね」とメッセージを送った。

 ◆なぎら健壱(なぎら・けんいち)1952年4月16日生まれ、東京・銀座(旧木挽町)出身。70年、全日本フォークジャンボリーに飛び入り出演。72年、1stアルバム「万年床」発売。代表曲に「悲惨な戦い」や「いっぽんでもニンジン」などがある。タレント、文筆家、写真家としても活躍し、映画「嗚呼!!花の応援団」シリーズの薬痴寺先輩は当たり役。主著書に「下町小僧」、「東京酒場漂流記」、「日本フォーク私的大全」など。2009年、浅草芸能大賞奨励賞。14年、スターの手形被顕彰者。

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