【ヤマヒロのぴかッと金曜日】『おとこ人生 夢街道』還暦を超えて夢をかなえたある男の挑戦!

 人生の転機というものは、いつどのような形で訪れるかわからない。たとえチャンスが巡ってきても「もう若くないさ」などと何かと理由をつけて尻込みしがちだ。モノにするには、行動を起こせるかどうかにかかっている。

 この春、一人の演歌歌手が誕生した。滝 あつし 60歳!遅咲きも遅咲き、還暦デビューである。

 MBSラジオのフロアに貼ってあった一枚のポスターに目が留まった。「滝 あつし、滝 あつし?いや、この人……谷村さんちゃうのん!?」

 そう、この滝さん。本名は谷村淳司(じゅんじ)さんという芸能プロダクション『一丁目一番地』の社長さんである。これまで歌声はおろか、日頃から声を張る姿も見たことがない谷村さんが、いったいどんな経緯でデビューすることになったのか……。

 郵便配達員の仕事をしながら歌のレッスンに通い歌手デビューを夢見ていた二十代のころ、谷村さんは縁あって大阪の芸能プロから誘われた。といっても専属歌手ではなくマネジャーとしての採用だった。芸能界に一歩近づいたには違いないが、あくまでタレントを支える裏方の仕事である。

 それから30年、歌手の声がかかることもなくマネジャー業に徹し、今ではあの浜村淳さんも所属する事務所の社長にまで上り詰めたのだ。おそらく、ご本人の頭の中にも歌手になるなんて夢はほとんど残っていなかっただろう。

 昨年夏、打ち合わせで会食した後の二次会で、谷村さんの歌声を耳にした徳間ジャパンの制作部長からCDデビューのお誘いが!とはいえ酒の上での冗談話だろうと思っていたら、翌日届いたメールの最後に「PS ところで発売日はいつにしましょうか?」。にわかに現実味を帯びてきた。

 10日ほど後、直接会って話をすることになった谷村さんは、行く直前、浜村さんに「このあと徳間ジャパンさんと打ち合わせに行ってきます」とだけ伝えたところ「徳間サン?ホーッ、社長にCDでも出せっていうことですか?」「???」なんでわかったんやろ!?90歳を過ぎれば、だいたい何でもわかるんやろか。

 「ハイ、まさにその話です!」

 「そうですか!それはもうぜひやっときましょう」

 そこから先はトントン拍子に話が進み、ついに長年の夢を果たしたのであった。

 いや~、今回の滝さんの話、うらやましい。うらやましいには理由がある。実は私にも、過去に一度だけチャンスがあった。40年前、まだ新人アナだった。当時『エンドレスナイト』(関西テレビ)という若者を中心に人気を博した深夜番組に、体調を崩した先輩アナのピンチヒッターとして出演した私は、ギターの弾き語りで谷村新司さん、さだまさしさん、松山千春さんの曲を歌ったところ、たまたま見ていたレコード会社の関係者から先輩アナの元に「あの新人くんのレコード出しませんか?」と連絡が来たのだ(これ、ホンマにホンマの話)。

 「いい話だからお受けしてもと思ったけど、まだ先がある。いまはアナウンサーとして修行の身だから、とりあえず今回はお断りしておいたよ」 「あっ、ハイ」

 こうして私の歌手デビューは幻で終わってしまった。あの時、そばに浜村さんがいたら…。いやいやその頃の私に、そこまでの熱い気持ちがなかっただけだ。

 滝 あつし、40年越しの二刀流。為せば成るの精神で『おとこ人生 夢街道』目指すは紅白歌合戦!

 ◆山本浩之(やまもと・ひろゆき)1962年3月16日生まれ。大阪府出身。龍谷大学法学部卒業後、関西テレビにアナウンサーとして入社。スポーツ、情報、報道番組など幅広く活躍するが、2013年に退社。その後はフリーとなり、24年4月からMBSラジオで「ヤマヒロのぴかッとモーニング」(月~金曜日・8~10時)などを担当する。趣味は家庭菜園、ギターなど。

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