金原ひとみ 「カンブリア宮殿」新MCに充実感 番組作りは「チーム」小説を書くのは「孤独」 芥川賞作家が語った相違点
芥川賞作家の金原ひとみ氏(42)が、テレ東系経済トーク番組「カンブリア宮殿」(木曜、後11・06)で、音楽クリエイターのヒャダイン(45)とともに新MCを務めている。経済に強いテレ東が誇る看板番組で、今月の大幅リニューアルに際して前担当の作家・村上龍氏(74)、俳優・小池栄子(45)からバトンタッチされた。第1回ゲストの伊藤忠商事・岡藤正広会長CEOには、独自の視点で鋭く切り込む場面も。「(下調べは)1日、どころじゃない」と笑いつつ、充実の思いで番組制作に携わっている。
デビュー作にして芥川賞受賞作「蛇にピアス」を連想させるようなリップピアスを施して現れた金原氏。おしゃれな姿とは対照的に、ゲストとのトークへの準備は地味な作業だという。
準備は入念に行い、丸1日かかることもある。「資料をいただいて、著書を読んで、台本が出来上がったら、打ち合わせがあって、最終決定稿の後、直前に番組の打ち合わせをするんです。最近、飲み過ぎて、激しい二日酔いが2回もあって…。そういう時は、もっと仕事をすればよかったなと思ったりもします」とユーモアたっぷりに番組制作の流れを語る。
時には部屋にひきこもって調べ尽くすというが、小説を書くのと同じ感覚で、苦痛ではないという。「いろいろと調べて、読むのは面白くて。全然、知らない会社のこととか、知らない経営者の『この会社は、こんなことやってるんだ』って知っていくのが楽しいんですよ」と目を輝かせる。
人生初MCの記念すべき初回ゲストとなった岡藤氏とのトークでは、「番組に携わって良かった」と再認識した。「巨大商社のトップとして時代、ニーズに合わせ変わり続けることに疲れたり、限界を感じることはないんですか?と聞いたら『それが面白いんだよ』みたいなお答えをされていて、凝り固まっていないんだって、とても柔軟な方で衝撃的でした」。業績を急成長させたトップの人柄を垣間見られ、新たな発見だった。
小説を世に出す感覚と番組作りとは、似て非なるものと実感。そこが面白いところでもあるという。「小説は一人で、孤独な状態で書く。家で書いている時もノイズキャンセルのイヤホンをして遮断しながら完全に一人ですけど、『カンブリア宮殿』は膨大な人数がいて、みんな一体何をしてるんだろうと。みんなが有機的に関わって、一つの作品を作り上げていくことが正反対すぎて、チームなんだなって伝わってくる。みんなで作り上げていく良さも実感しています」。
前MCで同じく芥川賞作家の村上氏には、追い付こうと背伸びをすることなく、自身の持ち味を出してゲストに切り込むと心がける。「同じことはできないですよね。龍さんは人物としてのオーラもあるし、自分は自分で新しいカンブリアの顔みたいになれるように、違った形でアプローチしたいなと。フラットな視点を持って挑みたい」。
小説を書く時、普通に街中のカフェに出向くこともある。書きながら周囲の会話に耳を傾け、面白い話はネタにするという。「そこから生まれる話もあるんですよ。聞きこぼさないようにします」と笑った。
どんな環境下でも肥やしにする姿勢は、番組作りでも変えず、ゲストの面白さを引き出す。番組はリニューアル後、ヒャダインとのコンビへの期待感もあってトーク部分が厚めに構成されているというだけに、金原氏にとっては腕の見せどころとなりそうだ。
◆金原ひとみ(かねはら・ひとみ)1983年8月8日生まれ。東京都出身。2003年デビュー作「蛇にピアス」ですばる文学賞、04年、同作で芥川賞を受章。2010年「トリップ・トラップ」で織田作之助賞。20年には「アタラクシア」で渡辺淳一文学賞。21年に「アンソーシャル ディスタンス」で谷崎潤一郎賞、25年には「YABUNONAKA-ヤブノナカ-」で毎日出版文化賞。エッセーには「パリの砂漠、東京の蜃気楼」などがある。
