大河ドラマ史に残る名作となった「べらぼう」 視聴者に突き刺さった“3本の矢”とは
NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」が14日、最終回を迎えた。都内でパブリックビューイングが行われ、主演の横浜流星(29)らが登壇。応募総数2万8600通の中から選ばれた約900人がフィナーレを見守った。
まさに「べらぼう」な大河だった。初めて江戸中期を舞台にし、合戦があるわけでも、有名武将が出てくるわけでもない。主人公は…蔦重??
どこか疑心暗鬼のまま始まった印象だが、大河ドラマ史に残る名作となった。視聴者に突き刺した3本の矢を分析する。
①恐るべし森下脚本
森下佳子氏の脚本がさえ渡った。初回から亡くなった遊女の裸体が登場する衝撃の幕開け。見切れているが正体不明で、12話まで「オーミーを探せ!」状態だった朋誠堂喜三二(尾美としのり)を巡る遊び心。序盤ですでに「今年の大河は何か違うぞ」と思わせ、年間を通して息をつかせなかった。
陰謀渦巻く幕府パートと立身出世の吉原(日本橋)パートを交錯させながら、ラストですべてが結びつく豪腕。数カ月越しの伏線や想像に委ねる描写も多く、終盤で田沼意次の参謀・三浦(原田泰造)スパイ説がささやかれたのは「今年の大河は何をしてくるかわからない!」と思わせたことの象徴かもしれない。
②キャスティングの妙
芸人だけでも葛飾北斎役のくっきー!や素顔で「どこいた?」状態になった鉄拳、コウメ太夫、妙にハマっていたナダルら毎週のように登場。和装で印象一変の歌手・新浜レオン、お江戸降臨でネット二度見のベッキーら硬軟織り交ぜて話題を呼び続けた。
テーマは「江戸のエンタメ文化」。蔦重がさまざまなジャンルの異才、知識人と知恵を出し合い、文化の多様性を提示する物語とキャスティングそのものが有機的に結びついており、自由度の高さを生かしたサプライズも見どころだった。
主演の横浜流星は、活気あふれる青年期から始まり、ラストでは役作りで激やせ。座長の役者魂が背骨を支えたのは言うまでもない。
③拡張した盤外戦
江戸のメディア王は、令和のメディア戦略にもたけていた。サプライズキャスティングや緻密な伏線、SNSのオフショット投稿などで、ネットニュースが大量に投下される土壌を醸成。ドラマ内で江戸を盛り上げる蔦重たちが、現実世界でもメディア的仕掛けで話題になっていく拡張世界が展開された。
大河ドラマという「大きな器」があってのものかもしれないが、年間を通して視聴者を江戸の世界と結びつかせ、なじみのなかったキャラクターたちに感情移入させた。蔦重、ありがた山でした!
