にしたん西村社長 20代で借金7000万円「池袋の怪しい街金」にも行った、目下の悩みは小4長女と映画を見たい
「にしたんクリニック」や「イモトのWiFi」などを手がけるエクスコムグローバル株式会社の西村誠司社長がデイリースポーツの取材に応じ、20代で借金7000万円を背負い、「怪しい街金」にまで手を出す寸前だったことを振り返った。25歳で起業してボイスメール事業でスタートしたものの鳴かず飛ばず。海外用WiFiレンタル事業で飛躍的に成長したがコロナ禍で業績が98%減となった。瀕死のなかPCR検査事業に活路を見いだしV字回復を果たした。大きな壁が立ちはだかっても乗り越えてきた西村氏。現在悩んでいることは小学4年生の長女の塩対応だという。
西村氏は大学卒業後、外資系コンサルティング会社に務めていたが25歳で退職して起業。有限会社インターコミュニケーションズを設立した。ボイスメール事業を思い立ち、「早くしないと他人に先を越されてしまう」との焦りがあり、自信もあった。
しかし、実際にやってみると甘いものではなかった。飛び込み営業などを連日こなし、契約をとろうとするもうまくいかない。資金は減り、融資をしてもらおうと東京・渋谷にあった信用金庫にアポ取りして申し込んだものの、担当者は西村氏が精魂込めて作成した事業計画書を見ることもなく書類の山に放り投げた。
「検討します」
ぞんざいな扱いだった。西村氏は当時を思い出して目を固く閉じ、「嫌な思いをしたけど、自分がそういうレベルだから仕方ないよなと思いました。だからこそ、もっと頑張ろうと思いました」。
収入の糸が細く、会社の家賃、従業員の給与のためあらゆるつてを頼って金を工面した。西村氏は当時を振り返り「もう、わらをもつかむ思いです。義理の両親、友達はもちろん、消費者金融からも。借りられるところからは全部借りました。僕はだから、せっぱつまった状況でなりふり構わずお金を借りに行く人の気持ちが分かるんです。冷静な判断はできない。恥ずかしいとか言ってる場合じゃないですからね」と話した。
30年ほど前は街中に公衆電話がよくあり、「借金一本化します」という張り紙があった。西村氏は「それをはがして池袋の怪しい街金に行ったんです。裏風俗が入っているような雑居ビルだったかな。借入申込書のような書類に書いたんですけど結局借りなかった。あれはやばかった。ぎりぎりで踏みとどまりました」。認可を受けていないように思えた金融業者からまで借金を考えるほど困っていた。
その後、海外用WiFiレンタル事業、PCR検査事業で業績を大きく拡大していった。西村氏がいま心血を注いでいるのが生殖医療だ。不妊治療専門のクリニック「にしたんARTクリニック」を22年に新宿で開院し、現在は関東、関西、名古屋、九州で12院が開いている。きっかけは自身の体験に基づいている。米国で暮らしていたときに3人目の子供が欲しいと思い、不妊治療を受けた。米国での治療が非常に高度な技術だったことから「日本でもこうした治療ができたら」と始めた。
西村氏がこの事業を続けていく上で大切にしている思いが、入社式で新入社員に送った言葉に鮮明に表れた。「一番力を入れているのが生殖医療です。子供の数が減っている。人口が減ると社会保障などいろいろな問題が起こる。一クリニック、一事業としてやっているのではなく、日本の未来を作っていく。そういう責任を持ってやっている」。
モチベーションとなっているのは西村氏を陰に陽に支えてくれた人たちへの感謝の思いだ。多額のお金を貸してくれた親戚、友人、知人、新規ビジネス開拓に手を差し伸べてくれた人々。
西村氏は「これまでさまざまな窮地がありました。お金を貸してくれた友人がいたり、誰かが手を差し伸べてくれた。そのおかげでひとつひとつの問題を解決できたんです。そのことへの恩義がすごくあります。不妊治療をしてくれたドクターにもすごく感謝しています。そのおかげでかわいい娘に会えた。だから自分が感謝される側の仕事をしたいという思いがあります。人の役に立つことをしたい」と淀みなく語った。
事業で得た利益を社会に還元したいとの思いから、ひとり親家庭への旅行支援を定期的に行っている。「神奈川から大阪に行ったご家族がいて、小さなお子さんがお手紙とお菓子をくれたんです。そういうことが純粋にうれしい。子供達の経験の幅も広がりますし」
難題が現れては克服してきた西村氏の目下の悩みは9歳長女の“塩対応”だ。「先日、娘と娘の友達を連れてよみうりランドに行ったんです」と“塩エピソード”を苦笑いで思い起こした。「ママは行けないからパパと3人で」と言ったところ、「ええー」と嫌そうに返ってきたという。それでも3人で行って楽しい時間を過ごした。なかなか一緒に出かけてくれないそうで、「長男、次男とはそれぞれと2人で旅行したことがあるんですけど娘は行ってくれません。一度、女房が数日だけど入院したんです。そのときは一緒に出かけてくれて犬カフェに行きました。ディズニーの映画に誘っても絶対に断られます。娘と映画を見たい。それが悩みです」。
おそらくは娘を持つ大半の父親が抱える悩みに西村氏も頭を抱えている。その西村氏がデイリースポーツで毎週木曜日(4月末から水曜日)に読者の悩みに答える「にしたん社長の人生相談 お悩みクリニック」を連載しているので、ぜひご一読を。