神保彰 新作を2枚同時発売「力強さ」のNY盤と「しなやかさ」のLA盤
1980年にカシオペアの一員としてデビューした日本を代表するドラマー、神保彰(60)が、デビュー40周年となる今年1月1日、26枚目のオリジナルアルバム「26th Street NY Duo」と、27枚目のオリジナルアルバム「27th Avenue LA Trio」を同時リリースした。2016年から毎年、元日に2枚ずつという驚異的なペースでアルバムを発表している神保に、「思っていた以上にうまくいった」という自信の新作について聞いた。
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新作は昨年に続き、それぞれニューヨークとロサンゼルスでレコーディングした。
NY盤はウィル・リー(ベース)とのデュオだった前作の発展形で、リー、オズ・ノイ(ギター)と5曲ずつ。デュオの魅力を「ミニマルなフォーマットであるからの可能性みたいなものをすごく前作で感じて。スペースがあるので、より自由なアプローチができる」と解説する。
初共演のノイには「言葉は悪いけど変態ギタリストというか。ちょっとメインストリームじゃない、外れたところにいる存在」という意識があった。それが昨年、リーの来日公演に参加していたのを見て、際立った存在感に「認識を新たにして」コンタクトした。
レコーディングでは「やっぱり普通ではない」ノイだったが、それは想定内。「曲全体が普通じゃない感じにならないように、普通じゃないセクションがあっても、必ず表通りに出てくるセクションがちりばめられているような。ずーっと裏通りじゃなくて、表通りに出て裏通りに出て、また表通りに出るような流れを意識して選曲」したという。
「しっかり彼なりの設計図を描いていてくれたので、作業がすごくスムーズでしたね。圧倒的にうまいなと思いました。全部すごい切れ味の鋭い演奏をしてくれましたね」
また、リーとは「前作ではやらなかったような曲想、シンプルな構造の曲をわりと採り上げて」、前作から前進。仕上がりには「音が出た瞬間にガツンと来るような骨太な感覚が全編通してある。LA盤がしなやかさ、NY盤が力強さみたいな、そう表現できる対照的なサウンド」と、自信を漂わせる。
LA盤は「ベストパートナー」と信頼するエイブラハム・ラボリエル(ベース)とのコンビに、ピアノのパトリース・ラッシェンを4曲、ラッセル・フェランテを5曲、それぞれフィーチャーしたトリオ編成。フェランテは前作の全曲に、ラッシェンも神保とブライアン・ブロムバーグ(ベース)の「JBプロジェクト」のアルバム「BROMBO3!!!」(17年)に参加と気心は知れている。
「パトリースはすごくR&Bのグルーヴを持った人なので、R&B指向の曲を弾いてもらったらラッセルとの対比が出て面白いなと思って。ラッセルはどっちかというとジャズ畑の人ですから」と対照の妙を狙った。
NY盤同様、LA盤も満足のいく仕上がりになったようだ。
「(ラボリエルとの)コンビネーションの深化が如実に出ているなと感じていて。いい意味での脱力感みたいなのを感じていただけるんじゃないかな。それと、LA録音ならではの透明感と奥行きを感じるサウンドになっていると思います。2人のピアニストの持ち味の違いがすごくよく出てますし。同じスタジオの同じピアノを、全く同じマイクセッティングで録っているんですけども、弾き手が変わるとサウンドが全然変わるんだなっていうのも面白かった」
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昨年に続いてNYとLAで録った理由は予想以上の音の違いだといい、「街の空気というか気候というか、あるいは生活、文化、そういうものが音にも如実に反映されるような気がします」と説明。「LAっていうと誰もが真っ青な空と、気持ちの良い気候を思い浮かべますけども、まさにそういう透明感のあるサウンドが録れますし、NYに行くと、冬場はものすごく寒くなりますし、雪も降りますし、大都会の高層ビルが立ち並んでいるような景色、そういうものをほうふつさせる音になります」と、2都市の違いを挙げた。
ミュージシャン気質も「全然違います」という。人の移動があるため一概には言えないが、LAは「わりとのんびりした感じ」、NYは「パキパキパキパキとした、きびきびした印象」だという。
収録曲も「日の当たる曲(LA)と、ちょっとダークな曲(NY)っていう、極端に振り分けました」と、意識して選曲。ジャケットの絵柄も、月下に摩天楼が立ち並ぶNY、陽光が通りにさんさんと降り注ぐLAというもので、それぞれのサウンドも「ビジュアルイメージの対照的な、いかにも正反対っていうのが、サウンドにもすごく如実に表れているような気がしますね」と、神保自身も認めるものになった。
この2枚、音による都市論とでもいうべきかもしれない。
