松下洸平 4度目でつかんだ朝ドラ「スカーレット」で奮闘中 「八郎沼」にハマる人続出

 朝ドラ「スカーレット」で十代田八郎役を熱演する松下洸平(撮影・佐藤厚)
 朝ドラ「スカーレット」で十代田八郎役を熱演する松下洸平(撮影・佐藤厚)
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 俳優・松下洸平(32)が初出演のNHK連続テレビ小説「スカーレット」で、女性のハートをがっちりつかんでいる。役柄は、戸田恵梨香(31)演じるヒロイン川原喜美子の夫で、信楽にやってきた大阪出身の陶芸家・十代田(そよだ)八郎。喜美子の生き方に影響を与える、マジメで繊細な雰囲気に「『八郎沼』にハマる」というワードが誕生したほど。関西弁の特訓など、4度目でつかんだ朝ドラに全力で取り組む松下が、充実感を漂わせた。

 「八郎沼」はできるべくしてできた言葉だった。「どれだけリアルに八郎に近づくか」と考える松下は、やれることはすべてやった。芸人のやりとりを四六時中聞いて、耳から関西弁を覚えた。東京出身ながら、今ではアドリブのノリツッコミが採用されるほどに。神戸出身とはいえ、東京生活の長い戸田からも「(私の)関西弁、合ってる?」と聞かれると告白。2人で照れるシーンを標準語に直して言い合い、互いに顔が真っ赤になった裏話も披露した。

 さらに、左利きを“矯正”し、「基本は右で作陶するもの」という陶芸シーンにも挑んでいる。資料用のろくろをひく姿から左利きと分かり、「直せますか」と注文があった。「夏くらいから急きょ右でご飯を食べる練習をして、劇中は全部右(でこなしている)」と言えるまでに。それでも、「文字だけがどうしても書けなくて」と苦笑したが、喜美子の似顔絵を描くシーンでは右手作で「なんとも言えない、いい感じの喜美子の絵が描けてる」と自賛した。これほどまでに全精力を注ぐ姿勢があれば、視聴者は“沼”に引き込まれていく。

 過去3度トライしてかなわなかった朝ドラは、画家の母親が大好きなこともあって目標だった。それだけに、松下は撮影インを「ガッチガチの初日」と表現し、「自分が朝ドラの現場にいるのも緊張したし、戸田さんがモニターでご覧になってるんで」と振り返った。松下のフレッシュさを買って起用したというNHK・内田ゆき制作統括から、戸田が「すっごいさわやかですよね」と言っていたことを聞くと、「えっ、本当ですか。『やっと薄い顔来たやん』と言っていたという話は聞いた」とおどけた。

 松下の力量の見せ場となったのが、家宝だった日本画家・深野心仙(イッセー尾形)の絵を、闇市で食料と引き換えに売ったと涙ながらに告白する場面。台本を読んだ時点で家でおえつしたという松下は「撮影が始まって、第1週の最後のシーンだった。現場のキャスト、スタッフは『松下洸平って誰?』ってところからスタートしてる。自分がどういう芝居をする俳優か、名刺にしなければいけないなと思った」と長ゼリフに臨んだ心境を口にした。

 苦労をバネにした。最初は音楽活動をしていたが、AAAの西島隆弘(33)らと共演した2009年の初舞台「GLORY DAYS」が転機となった。それまでは鳴かず飛ばずだった。

 「300~400人(収容)の劇場にパンパンにお客さんが入ったことがうれしかった。だから続けたいと思った。お客さんが4、5人のところでライブをしてたんで。自分も1人でお客さんを呼べるようになりたかったし、同年代の若い俳優4人でやってて楽しかった。これを続けたいと。それで音楽をお休みした」と舞台へシフトチェンジした経緯を明かした。その後も心が折れそうなときが何度もあったというが、「周りの人たちに恵まれた」と芸能界を去ることはなかった。

 「スカーレット」では喜美子の母を演じている女優・富田靖子(50)との二人芝居「母と暮せば」(18年)で、俳優にとって「想像する力」が大切と分かった。未体験の戦中、戦後の物語。「どこまでいっても戦争を経験したわけでなければ、(戦争で)親を失ったことも、闇市も行ったことがない。想像し続けなければならない。その考える力をくれた。長崎の原爆で亡くなった浩二役。幽霊の気持ちは誰に聞いても分からない。こっちで考えるしかない」とうなずいた。

 柿澤勇人(32)と初の二人芝居に挑んだ11年のミュージカル「スリル・ミー」では「相手をリスペクトすることが大事と学んだ。「ピアノ1台で100分、歌ってしゃべる。相手を信じなきゃ成立しない」と断言。昨年12月の「スカーレット」で戸田と2人だけの出演も経験したが、「戸田さんを信じてるし、信頼してる。何の不安もなかった。むしろ楽しみで。びっくりしたけど。大体、1週分の台本をいただいて、回のアタマにその日出るキャストが書いてあるけど、戸田恵梨香と松下洸平しか書いてなくてウソでしょうって」と笑った。

 八郎と喜美子夫妻には男児が誕生。松下は「恐ろしい父性が沸いてきた」というほど、撮影現場で子役にメロメロになっているという。夫婦には今後、クリエーター同士ならではの軋轢(あつれき)なども起こるが、根本で愛し合っていることに変わりはない。

 喜美子のように天才型ではなく、煮詰まったときも気分転換できない八郎について、松下は「僕も八郎タイプ」とした。俳優として、「想像する力」と「相手へのリスペクト」を胸に、今年の飛躍も確実。今後は多くの人が“洸平沼”にハマりそうだ。

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