京都大・山中教授にノーベル賞

 スウェーデンのカロリンスカ研究所は8日、2012年のノーベル医学生理学賞を、さまざまな組織の細胞になる能力がある「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を開発した山中伸弥京都大教授(50)ら2人に授与すると発表した。iPS細胞は再生医療への利用が期待され、生命科学研究の一大潮流をつくった日本オリジナルの画期的な成果。開発から6年のスピード受賞となった。

 「感謝という言葉しかありません」。山中教授はは午後8時すぎ、京都市左京区の京大で記者会見し、「研究を続け、一日も早く本当の意味での社会貢献を実現したい」と決意を語った。

 グレーのスーツにネクタイ姿の山中さんは、やや緊張した面持ちで大勢の報道陣が待つ会見場に到着した。

 会見直前に会場で野田佳彦首相から祝福の電話が入ると「ありがとうございました。国を挙げて支援していただいたおかげです。ますます頑張っていきます」と携帯電話を握りしめた。

 会見中は、研究者らしい真剣なまなざしに、時折笑みを浮かべなら質問に答えた。「日の丸のおかげ」「家族に心から感謝」と自分を支えた研究仲間や家族、国へのお礼の言葉を繰り返し「支援がなければこのような素晴らしい賞は受賞できなかった。日本の国が受賞した賞だ」と語った。

 連絡を受けたときの様子を問われると「受賞すると思っていなかったので、家にいた」。洗濯機を直している最中に携帯電話に連絡が入ったと明かし、笑いを誘った。

 連絡を受け、自身も家族もぼうぜんとしたという。「80歳を超えた母に報告できたことが本当に良かった」と喜びをかみしめた。

 受賞については「過去の業績というよりはこれからの発展に対する期待の意味が大きいと感じている」と話した。iPS細胞はまだ新しい技術であると強調した上で「本当の意味で医学応用を実現させたい」と力を込めた。

 日本人の受賞は2年ぶり19人目。医学生理学賞は25年ぶり2人目となった。同時受賞は、「クローンカエル」を実現した英ケンブリッジ大のジョン・ガードン名誉教授(79)。

 山中教授は、マウスの皮膚細胞に4種類の遺伝子を組み込むと、さまざまな組織の細胞になる能力を持った万能細胞に戻せることを世界で初めて発見。iPS細胞と名付け、2006年に発表した。

 研究の評価が確立してから授与されることが多い自然科学系のノーベル賞では、開発から6年というスピード受賞となった。世界の研究の流れを一変させたインパクトの大きさを高く評価したとみられる。

 ノーベル賞を創設したアルフレド・ノーベルの遺言では「前年に人類に最も貢献した人」が対象。だが実際には受賞まで数十年ということも珍しくなく、08年に物理学賞を受賞した南部陽一郎・米シカゴ大名誉教授は半世紀前の理論。化学賞の下村脩・米ボストン大名誉教授がクラゲから蛍光タンパク質を発見したのも40年以上前だった。

 授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ、賞金800万クローナ(約9400万円)が2人に贈られる。

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