大里桃子「試練を乗り越えるたびに、新しい自分に出会える」 熊本地震から4月で10年ふるさとに復興の活力を

 JLPGAツアーを予選から決勝まで独占配信しているU-NEXTと、デイリースポーツが注目選手を取り上げる連載「推し活応援宣言」。今回は、生まれ故郷の熊本を拠点に活動を続ける大里桃子(27)=伊藤園=を取り上げる。昨季は終盤に苦しみながらもシード権を死守した。自らも被災した熊本地震から4月で10年。多くの試練を乗り越えてきた大里が、郷里、そして今季に懸ける思いを語った。

 3月13日、台湾ホンハイレディース第2ラウンド。大里桃子は、観戦に訪れていた台湾出身のレジェンド、ト阿玉から声をかけられた。「ここはグリーンが難しいでしょう?コースが短い分、そうやって難しくするしかないの」。短いどころか、長すぎてパー4の第2打が3番ウッドでも届かない場面が何度もあった。「台湾恐るべし、と思いました」と笑う。

 予選こそ通過したが、4日間で通算23オーバー。ショックを引きずりそうにも思えるが、沈んだ様子はない。「キャディーさんともずっと『本当にいいショットが打てている』と言い合っていました。コースとの相性だと割り切って、次からの国内での試合に臨みたい」と明るく言う。

 苦難なら、何度も味わってきた。黄金世代の一員として、2018年にはプロ転向後わずか23日という史上最短記録でツアー初優勝を挙げた。だが、のちにドライバーやパターのイップス症状に苦しみ、2023年にはシード落ちも経験した。

 2024年の宮里藍サントリーレディースで、復活の3年ぶりツアー3勝目。直後の全英女子オープンでは最終日に全体ベストの「67」をマークして実力を世界に示した。昨年も序盤は優勝争いを重ねたが、シーズン半ばに再びパットイップスの症状が出た。

 6試合連続で4パットを記録。9試合で8度の予選落ちを喫するなど、再びシード陥落の危機に瀕した。パットイップスの克服には、多くの選手が数年を要する。だが「いろいろ経験してきて、他の選手よりは引き出しがあったかも」とアームロック式グリップ転向でV字回復。シーズン終盤にポイントを稼ぎ、49位でシード圏に滑り込んだ。

 「試練を乗り越えるたびに、新しい自分に出会える気がしています」。今年は初めて、全米女子オープンの国内予選へのエントリーも試みた。「ネット上での手続き開始から10分で枠が埋まってしまってダメでしたけど」。苦笑いしつつも「全英女子で活躍できたこともあったので、これからは海外の試合にも積極的に挑戦したいです」と語気を強めた。

 熊本地震も経験した。2016年、KKT杯バンテリンレディースオープンに高校3年生アマとして出場予定だったが、開幕前夜の4月14日にマグニチュード(M)6・5の前震に襲われた。そして、大会中止を受けて熊本市内の自宅で過ごしていた16日深夜に、M7・3の本震がやってきた。

 大きな冷蔵庫が、重さを失ったように室内を動き回る。激しく強い揺れを目の当たりにし、車内泊や祖母の住む実家への避難も強いられた。今も南阿蘇村のゴルフ場に行く途中、阿蘇大橋が落ちた場所を見て、あの日の怖い思いがよみがえってきたりもする。

 トラウマが残るというなら、その土地を離れればいい。そんな意見もある。だが大里桃子は、熊本を拠点とするスタイルを変えようとは思わない。「どこに住んでいても、災害への備えが大事というところは変わらない。そして何より、私は熊本が大好きなので」

 こればかりは、割り切れるものではない。割り切るつもりもない。かけがえのない場所だから、私はここで頑張る。うれしいことも、悲しいことも、胸に刻んで頑張る。4月で地震から10年。ふるさとを拠点に活躍する姿で、復興の歩みを続ける人々をこれからも励まし続ける。

 【アラカルト】

 ◆黄金世代の一員 1998年8月10日、熊本県生まれ。8歳でゴルフを始める。熊本国府高に進学し、1、3年時に全国高校選手権女子団体優勝。2年時も渋野日向子の作陽高に敗れたが準優勝だった。

 ◆最速でプロ優勝 2018年7月にプロテストに合格すると、その23日後にCAT Ladiesでツアー初優勝。1988年のツアー制施行後の最短記録となった。2021年のほけんの窓口レディースで2勝目。

 ◆人生の節目 昨年12月にインスタグラムで「この度、かねてよりお付き合いしていた方と入籍いたしました」と発表。渋野、河本といった黄金世代をはじめ、多くの選手から祝福のコメントを寄せられた。

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