亡き父修さんと悲願の優勝を-木戸愛 6シーズンぶりシード選手として迎える開幕戦へ「だから今も強くいられます」
JLPGAツアーを予選から決勝まで独占配信しているU-NEXTと、デイリースポーツが注目選手を取り上げる連載「推し活応援宣言」。6シーズンぶりにシード権を獲得して今季に臨む木戸愛(36)=日本ケアサプライ=を取り上げる。シード権を失っていた2023年に、プロレスラーで一番の理解者だった父・修さんが亡くなった。今季は亡き父とともに12年以来となる2度目のツアー優勝を目指す。
9日、東京・IMMシアター。木戸はバーチャルゴルフツアー「TGX SERIES」の表彰式会場で、トロフィーを抱きながら照れくさそうに笑っていた。東北・北海道ノーザンアイスの一員として優勝を果たしていた。
初戦となる準決勝で7メートルのパットをねじ込み、自軍に流れを引き寄せた。普段はBリーグのアリーナDJを務めるMCが盛り上げる会場で、終始華やかな笑顔を観客に振りまいた。
「やっぱり、優勝ですね」。静かなバックステージに引き揚げると、ポツリと言った。昨季は7月の資生堂レディースで優勝争いを演じた。最終日18番で、12メートルのロングパットを決め、永峰咲希とのプレーオフに進出。1年で最も印象的なシーンとして、ファンの心に刻まれた。
年間ポイントランクでも38位に入り、6シーズンぶりとなるシード復帰を果たした。パーオン率73・2884%で全体6位に入るなど、ショット力は出色。若い選手が次々と台頭してくる中、35歳で再びキャリアのピークを迎える姿は、多くの人々を励ましもした。
それでも本人は「でも、優勝したい」と何度も繰り返す。2012年、サマンサタバサガールズコレクションレディースで、プロ5年目にしてツアー初優勝を果たした。しかし、歓喜の最終日18番のグリーン付近に、最大の理解者はいなかった。
父・修さんは、新日本プロレスで長く活躍したことで知られている。報道陣もその姿を探したが、一時的に関係者駐車場に身を隠してしまっていた。今日のスポットライトは娘に-。現場で見届けたい思いを押し殺してふるまうのは、いかにも父らしいと感じた。
「次は18番グリーン近くで見てもらえたら」。そんなことを話していたが、2勝目は思ったよりも遠かった。19年には8年間守っていたシード権も失った。
「優勝するためには優勝争いを重ねることで、そのためにはシードが必要。目標まではたくさんステップがあるのに、一歩目すら踏み出せない。さすがに心が折れそうにもなりました」
そんな時、支えになったのも父だった。「一生懸命頑張っていれば、必ずいいことがある」。その言葉の重みは、経験豊富なプロアスリートならではのものだった。人生で最もつらい時期を、親子の二人三脚で乗り越えた。その恩義を、少しだけ複雑な気持ちで振り返る。
「『優勝が来なくてもいいじゃないか。そんなにゴルフを好きになって、目標に向かえていることが素晴らしい』という言葉もかけてくれました。でも、私がそう言わせてしまったところもあるのかなと…」
23年12月、父は天に召された。シードに復帰できずに苦しむ自分に、最後まで気を使わせてしまった。何より、優勝を現場で見せられなかった。そんな思いが、木戸を14年ぶりの優勝へと駆り立てる。
「父とは、私が一番話したんじゃないかというくらいたくさん話し合って来た。自分が落ち込んだ時も『きっとこういう言葉をかけてくれるだろうな』と声が思い浮かぶ。だから今も強くいられます」
6シーズンぶりにシード選手として迎える新シーズン。悲願の優勝を目指して、父と戦う。「3月の開幕戦には、きっと『落ち着いて頑張っておいで』と言って送り出してくれるんだと思う。それを支えに頑張りたい」。涙をこらえ、語気を強めて天に誓う。
♥木戸愛(きど めぐみ)アラカルト
◆アスリート一家
1989年12月26日、神奈川県横須賀市生まれ。父は「いぶし銀」と呼ばれファンに愛されたプロレスラー木戸修。妹の侑来もJLPGAツアー出場経験のあるゴルファー、2023年に結婚した夫の神農洋平もプロゴルファーというアスリート家族。
◆強豪の門をたたいて
10歳でゴルフを始める。「強い選手が集まっている環境でやったほうがいい」という修さんの勧めで東北高校に進学。06年に全国高校ゴルフ選手権女子団体で優勝。08年のプロテストに合格。
◆ジャンボ門下で復活
シードから遠ざかっていた23年に尾崎将司さんの門下に。ショット精度が向上し、25年の6シーズンぶりシード獲得につながった。「ジャンボさんの一言一言が私にとっての宝物」と語る。




