強い心で勝利の女神を振り向かせた河本結

 ファイトあふれるプレーで人気の河本結(21)=リコー=が、初めて全国にその名をとどろかせたのは昨年3月31日だった。この日、宮崎県・UMKCCでアクサレディースの最終日が行われ、単独首位から出た河本が4バーディー、2ボギーの70で回り、トーナメントレコードを更新する通算15アンダーで初優勝を果たした。

 前年のステップアップツアーで4を挙げて賞金ランク1位になったとはいえ、レギュラーツアー本格参戦4試合目でいきなりの優勝。その陰には前週のTポイント×ENEOSゴルフトーナメント最終日に経験したメンタル面での“覚醒”があった。

 その最終日。初のトップ10入りを目指して7位からスタートしたが、13番パー5でつまずいた。3Wで打った2打目は右の浅いラフのはずが、探しても発見できず3分間の捜索時間が経過。ロストボールとなり、このホールをダブルボギーにしてしまった。切り替えができないまま臨んだ14番で連続ダブルボギー。結局78をたたいて37位に沈んだ。

 この出来事が当時20歳の女子プロを大きく成長させるきっかけになる。河本は翌日月曜日にこう思いを吐き出した。

 「猛反省しているのがロストボール直後のメンタルです。ロストになったのは仕方がないと思おうとしても、悔しくて切り替えができなかった。気持ちの整理がつかないまま次の14番をプレーし、連続ダブルボギー。現実をしっかり受け入れて次の1打に集中しなくてはいけないのに…。その時、ギャラリーの皆さまは最後まで応援してくれていた。自分のことでいっぱいで、その声援にこたえられなかったのが残念でなりません」

 アクサレディース最終日の河本は前週とは見違えるように堂々としていて、自分自身をしっかりコントロールできているようだった。1番で第2打を木に当ててボギー発進となったが、動じる様子はまったくなかった。4番でカラーから5メートルを沈めてバーディーを奪って優勝への流れをキープ。2位と大差をつけて迎えた最終18番パー5も果敢に2オンを狙ってバーディーで締めた。

 アクサ初日に2位発進を決めた後、河本はすがすがしい笑みを浮かべながらこう話していた。「あの(ロストボールの)時は悔しくて気持ちが切れたけど、今日は長いパットがたくさん入った。やっぱり神様は見ていてくれる。今週は神様がほほ笑んでくれるようなゴルフをしたい」。猛反省の前週から1週後にはスポットライトの真ん中へ。自分としっかり向き合うことで身につけた強い心で、河本は勝利の神様を振り向かせた。

 河本結(かわもと・ゆい)黄金世代の1998年8月29日、愛媛県松山市出身。5歳でゴルフを始める。18年プロテスト合格。同年ステップアップツアー賞金ランク1位。昨年はアクサレディースで初優勝し、賞金ランク6位。今季から米ツアーに参戦。日体大在学中。163センチ、58キロ。血液型O。

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