「京都一のワル」の人生を変えたおにぎり、厳しくも生徒に注いだ愛情 伏見工ラグビー部元監督・山口良治さん死去
京都の伏見工ラグビー部を率いて全国制覇を達成し、ドラマ「スクール☆ウォーズ」のモデルになった山口良治さんが29日朝、脳梗塞(こうそく)のため京都市内の病院で死去した。83歳。教え子に愛された人だった。
ドラマで描かれた名場面がある。「京都一のワル」と呼ばれた生徒を半ば強引にラグビー部に迎え入れ、遠征に連れて行った時の出来事である。松村雄基が演じた大木大助は弁当を持参しておらず、空腹を満たすために水道の蛇口から水をがぶがぶ飲んでいた。それを見かけた山口さんが、妻に作ってもらった弁当を彼に渡すシーンがある。
大木大助のモデルは、元奈良朱雀高校ラグビー部監督の山本清悟さん。父子家庭で出育った山本さんが、いつも腹をすかせているのを山口さんは知っていた。学校をサボらないように朝は迎えに行って途中の喫茶店で朝食をとらせ、遠征や試合になると大きなおにぎりを2つ渡していた。「手の付けられないほどのワルだった」という山本さんは、後にこう話している。
「僕はおにぎり1つで(人生が)変わった人間です。あの時のことを思うと、今でも平常心ではいられなくなる。山口先生が僕の人生を変えてくれた」
その言葉を山口さんに伝えたことがある。すると「シンゴがそんなことを思ってくれているとはなあ」と、肩を震わせながら大粒の涙を流していた。
伏見工で高校日本代表に選出されるまでになった山本さんは、日体大を経て教職に就く。恩師と同じ道に進み、定年退職を迎えてからも嘱託再任用でラグビーを教え続けた。病を患ったこともあるが、それでもラグビーに携わっている理由を聞くと「教えてもらったことは、残していかなアカンやないですか」と、そう答えた。
就任当時の伏見工は、不良ばかりが集う弱小校だった。厳しくも、生徒に注いだ愛情が実を結び、平尾誠二さんを擁した80年度に初の全国制覇を達成。「泣き虫先生」と呼ばれた山口さんの教えは、これからも生き続けてゆく。
