安青錦 ウクライナ出身力士初V 史上最速大関へ 母国戦禍から逃れ来日3年「自分の選んだ道は間違いではなかった」

 安青錦(右)は豊昇龍を破り優勝を決める(撮影・山口登)
 豊昇龍(右)を送り投げで破る安青錦
 武蔵野市のカフェ「クラヤヌィ」を訪問した(中央)=10月(日本ウクライナ友好協会KRAIANY提供)
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 「大相撲九州場所・千秋楽」(23日、福岡国際センター)

 新関脇安青錦が12勝3敗で初優勝を飾った。ウクライナ出身で初。本割で大関琴桜を内無双で破り、横綱大の里の休場による不戦勝で勝ち星が並んだ横綱豊昇龍との優勝決定戦を送り投げで制した。高田川審判部長(元関脇安芸乃島)は大関昇進を諮る臨時理事会の招集を八角理事長(元横綱北勝海)に要請し、了承された。琴欧州(後の琴欧洲=現鳴戸親方)の所要19場所を超え、所要14場所の史上最速昇進が事実上、決まった。初場所(来年1月11日初日、両国国技館)では、琴桜と東西大関がそろう。

 花道の付け人と抱き合った。涙が浮かんだ。普段クールな安青錦が目頭を押さえた。「ずっと目標だった。すごくうれしかった」。決定戦の大歓声も「(優勝が)信じられなくて、あまり聞こえなかった」と感激が押し寄せた。

 大の里の休場は出発前に知った。「本割に集中したので、気にならなかった」と臨んだ琴桜戦。組み止められながら内無双で撃破。「力を使う相撲だったので、息を整えて気合を入れ直した」と備えた。優勝決定戦は豊昇龍の突き押しを「体に任せた」といなし、後ろ向きに崩して組み付き、送り投げで破った。

 初優勝。敢闘賞と技能賞の三賞受賞。新入幕から5場所連続2桁勝利は過去にいない。高田川審判部長は「言うことがない。安定感が抜群」と、大関昇進を諮る臨時理事会招集の要請を決定。八角理事長は「来年、横綱になって福岡に帰ってくる可能性もある」と承認した。

 理事会で却下された例はなく、事実上昇進が確定。「三役で3場所合計33勝」が条件とされるものの、照ノ富士らと同様、起点が平幕で成就した。初土俵から14場所の初優勝は、年6場所制では24年春場所の尊富士の10場所に次ぐ2番目のスピード記録(付け出し除く)だ。

 ウクライナ侵攻を受け、国外移動禁止となる18歳の誕生日寸前、2022年2月に母親が暮らすドイツに避難。4月に来日し、関大相撲部で汗を流し、安治川部屋に入門した。「戦争がなかったら大学に通い、アマチュアで相撲を取っていた」と語っていたが、この日、17歳の決断を「自分の選んだ道は間違いではなかった」と振り返った。

 今年2月、師匠の安治川親方(元関脇安美錦)と化粧まわしに使う、世界的アーティストのキース・ヘリングの美術展を鑑賞した。「何を描いても自分の形なので誰も分かる。相撲もそう。顔を見なくても、相撲を見れば安青錦だと分かるようになりたい」。その言葉通り、低い姿勢で崩れない、多彩な技を誇る相撲は、唯一無二になった。

 琴欧州を超え、史上最速となる所要14場所での大関昇進。「うれしいですけど、もう一つ上の番付がある。そこを目指していきたい」。安青錦は普段通り、クールに言い切った。

 【安青錦アラカルト】

 ★本名 ヤブグシシン・ダニーロ

 ★生年月日 2004年3月23日

 ★出身地 ウクライナ・ヴィンニツャ

 ★相撲歴 7歳から

 ★大相撲の歩み 2023年9月初土俵、24年11月新十両、25年3月新入幕、25年9月新三役

 ★しこ名の由来 師匠の「安美錦」とウクライナの国旗「青」から。「新大」は来日を導いた関大相撲部主将だった山中新大さんから。

 ★目標の力士 安美錦

 ★得意 右四つ、寄り

 ★好きな食べ物 肉

 ★好きな言葉 ありがとうございます

 ★ニックネーム ダーニャ

 ★趣味 筋トレ

 ★サイズ 身長182センチ、体重140キロ

 ★血液型 不明

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