藤木豪心 兄妹で目指すモーグル代表 サンテレビ社員で虎中継や「熱血!タイガース党」担当 取材から大竹や近本の練習法取り入れる
2026年2月6日に開幕するミラノ・コルティナ冬季五輪まで約3カ月。冬の祭典に挑むアスリートや、支える人たちなどを紹介する「ミラノへ駆ける」を随時掲載する。1回目はフリースタイルスキーの男子モーグルで初出場を目指すテレビマン、プロ野球阪神タイガース戦の中継で知られるサンテレビの社員、藤木豪心(ごうしん、28)=イマトク。五輪出場権を得るために必要なW杯8位以内を今春までに達成し、日本代表最大4枠を争うランキングで4位につける。妹・日菜(24)=武庫川女大院=も代表圏内で、きょうだい同時出場も視野に入れている。
甲子園から白銀のミラノへ、戦いの舞台を移す。藤木豪は「本格的にスキーを始めた時から、トップにあるのは五輪。そこでメダルを取りたいと思っていた」と心に秘めてきた思いを口にする。
雪山と無縁の大阪府阪南市出身だが、スキー好きの父・巌さん(58)に連れられて幼少期から長野県などの冬山で経験を積んだ。競技に打ち込む一方、2023年にサンテレビ入社。阪神戦の中継スタッフや、情報番組「熱血!タイガース党」のディレクターなどを務めてきた。ナイター中継の日は午前中にジムでトレーニングをしてから出社、深夜まで勤務する。
阪神選手を間近で見ることはスキーにも生きているという。「取材者というよりアスリートとしての興味で」と話を聞く中で、印象的だったのは大竹耕太郎投手がメンタルを整えるために行っている瞑想(めいそう)。自らも取り入れ、集中力が持続するようになったという。「僕の競技も、自分でペースをつくるところが投手と似ている」。近本光司外野手からは臀部(でんぶ)のストレッチの重要性を聞き、参考にした。
今季で競技の第一線を退くと決めている。もともと18年平昌、22年北京五輪を目指したがかなわず、就職のタイミングで引退するつもりだった。しかし、22年の全日本選手権で優勝。入社後も休暇を利用して大会に出場する中で、W杯出場権を得ることができた。上司に相談したところ「そんなチャンスがあるならW杯に出てみたら?」と背中を押されたという。
今年3月のW杯アルマトイ大会(カザフスタン)で、2人同時にスタートして競うデュアルモーグルで8位となり、五輪派遣推薦基準をクリア。ミラノを射程圏に捉えたところで、職場の協力もあり10月下旬から休職して競技に集中することになった。「頑張って来いと送り出してくれたのは感謝しかない」と後押しを受け、同社でも前例のない“二刀流”に挑んでいる。
最大4の代表枠で、藤木豪は今春までのポイントランクで4番手。今冬のW杯でモーグルとデュアルモーグル計9戦をこなし、来年1月19日の決定基準日までにポイントを上積みして代表入りを確実にしたいところだ。
集大成のシーズンは、第1エアで高難度のダブルフルツイスト(伸身後方1回宙返り2回ひねり)に挑む。第2エアとの組み合わせで最高難度が期待でき「表彰台に乗る選手は大体、それができる。決めきれば五輪もW杯もメダルが狙える」と勝負に出る。
最後の挑戦と決めているからこそ「最近は難度を上げられないと思っていたが、男のロマンにかけて自分のやりたいことを決めて勝ちたい」と可能性にかける。全てを出し切った先に、夢舞台への扉が開くはずだ。
◇藤木豪心(ふじき・ごうしん)1997年5月31日、大阪府阪南市出身。父の影響で3歳からスキーを始めた。13年、中学3年でJOCジュニア五輪杯中学生の部優勝。17年12月、W杯中国太舞大会5位。22年、全日本選手権デュアルモーグル優勝。25年3月、W杯アルマトイ大会デュアルモーグル8位。桃山学院高から立命大を経て23年4月にサンテレビ入社。
◆フリースタイルスキー・モーグルのミラノ・コルティナ冬季五輪への道 モーグルはコブのある斜面を滑り降り、2つのジャンプ台でエア(空中技)を決めて精度やスピードを競う。日本の出場枠は男女とも最大4。2024~26年シーズンのW杯または世界選手権で、基準日の26年1月19日までに以下の成績を収めた選手を番号順に選出する。①8位以内の成績を1回以上②10位以内の成績を2回以上③12位以内の成績を3回以上。該当者が出場枠数を超える場合、各条項内における基準日の五輪出場枠配分リスト上位者を優先。今大会から2人同時にスタートして競うデュアルモーグルも行われる。
◆近年のきょうだいでの冬季五輪出場 ノルディックスキー複合男子の渡部暁斗(兄)&善斗(弟)は2014年ソチ五輪から3大会連続で同時出場を果たし、22年北京大会では団体で銅メダルを獲得した。ノルディックスキー・ジャンプ男子の小林潤志郎(兄)&陵侑(弟)は平昌と北京両大会に出場。スピードスケート女子の高木菜那(姉)&美帆(妹)は平昌と北京大会で同時に出場し、団体追い抜きで平昌は金メダル、北京では銀メダルを獲得した。カーリング女子「ロコ・ソラーレ」の吉田知那美(姉)&夕梨花(妹)は平昌で銅、北京で銀メダルを手にした。

