豊昇龍 横綱初Vへド執念12勝目「勝ちにいきました」気合十分の仕切りからまさか0秒7の早業 館内どよめき→怒声も

 若隆景(手前)をはたき込みで下した豊昇龍(撮影・佐藤厚)
 若隆景(右)を叩き込みで下す豊昇龍
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 「大相撲秋場所・14日目」(27日、両国国技館)

 横綱豊昇龍が立ち合いの変化で関脇若隆景をはたき込み、12勝目を挙げた。先に大関琴桜の休場で横綱大の里は13勝としていただけに、不戦勝で優勝が決まる超異例の事態を免れた。両横綱とも昇進後初優勝がかかる、千秋楽の大一番に臨む。若隆景は負け越し、大関とりが振り出しに戻った。新小結安青錦は平戸海をはたき込み11勝目。隆の勝も関脇霧島を突き出して11勝に伸ばし、三役復帰に前進した。

 わずか0・7秒。結びの一番で、まばたきの間に終わるあまりにもあっけない幕切れに、場内は騒然となった。豊昇龍は立ち合いで右に回り込むと、そのまま上手を取るように相手をはたき込んだ。勝ち名乗りを受け、険しい表情のまま花道を引き揚げた後、支度部屋で「今日は勝ちにいきました」と第一声。内容以上に、横綱として千秋楽まで賜杯を争う責任感と執念をにじませた。

 国技館は異様な空気に包まれた。まずは大関琴桜の休場発表に観客からため息が漏れると、続いて対戦相手の大の里の不戦勝がアナウンスされ、ため息は大きくなった。さらに、続く結びの一番で、横綱がまさかの変化で決着。フラストレーションがたまる展開に観客席はどよめきに包まれ、中には怒声も交じった。

 八角理事長(元横綱北勝海)は横綱の変化について「どうしても(優勝を懸けて)明日にいきたいという必死さが伝わってきた」と擁護。大の里も不戦勝という形になったが、「お互いが横綱として初優勝(が懸かる)という形になった。今日来たお客さんには申し訳ないけど」と理解を求めた。高田川審判部長(元関脇安芸乃島)も結びの一番について「あっけない相撲だったが、豊昇龍は最初から変化を狙ったわけじゃなく、強いて言えば冷静だった。勝負は一瞬だったが、そこが横綱の差」と評した。

 11連勝の後、2連敗と失速したが、悪い流れを断ち切った。師匠の立浪親方(元小結旭豊)によれば場所前の腰痛が再び悪化したというものの「まだチャンスはあるので本人は諦めてない」と代弁する。さらにライバルが戦わずしてトップを守る流れとなったが、豊昇龍は「気にしなかった。(連敗も)終わったことは終わったことで仕方ない」と言い切った。

 千秋楽で、1差で優勝争いを演じる横綱同士の直接対決は6年ぶり。さらに、追う立場から本割、決定戦を制して逆転優勝となれば、1997年夏場所の曙以来28年ぶりとなる。横綱4場所目で初賜杯が懸かる豊昇龍は「残り一番、しっかり集中していきたい。以上」と、自らを鼓舞するように強くうなずいた。

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