大の里 40年ぶり新会場・IGアリーナで新横綱Vへ好発進 立ち合いでつっかけも危なげなく寄り切り「今日勝てたのは大きい」
「大相撲名古屋場所・初日」(13日、IGアリーナ)
3場所連続5度目の優勝を狙う新横綱大の里(25)=二所ノ関=は新小結欧勝馬(鳴戸)を寄り切り、白星スタートを切った。今年から新会場となる名古屋市北区のIGアリーナで幕を開け、本場所では東京・両国国技館が落成した1985年初場所以来40年ぶりとなる新会場で、師匠の二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)と同じ新横綱優勝へ好発進した。4年ぶりに東西横綱がそろい、横綱豊昇龍(立浪)は小結高安(田子ノ浦)を外掛けで退けた。一人大関の琴桜(佐渡ケ嶽)は、平幕安青錦(安治川)の内無双に屈した。
日本最大級アリーナの天井高30メートル。チケットは発売日に完売。他会場よりも高い位置の「満員御礼」の垂れ幕が、大歓声でたなびいたように見えた。大の里が大器らしい完勝で欧勝馬を退け、大横綱への第一歩を踏み出した。
立ち合い、左のおっつけで欧勝馬の体を起こし、のぞいていた右を最後は上手に持ち替え、危なげなく寄り切った。「初めてだらけで、今日勝てたのは大きい。いろんなタイミングを見つけるのが大変だった。先場所までとは、会場もガラリと変わった」。42本の懸賞を手にし、安どの表情を浮かべた。いつもの1勝と違うか、と問われると「そうですね」とうなずいた。
最初の立ち合いで珍しくつっかけ「自分でもビックリした」と言うように緊張していた。6月に巡業がなく、この日でまだ4度目の土俵入り。豊昇龍の1分38秒に対し、1分20秒と明らかに速い。直後の賜杯返還式を終えた時は、汗びっしょりで硬い表情だった。史上最速所要13場所で昇進を決めた男でも、平常心ではなかった。
1985年初場所の両国国技館以来となる新会場。師匠に続く新横綱優勝、日本出身力士では貴乃花以来の3場所連続優勝、千代の富士に続く新会場優勝などへの期待も、重圧だっただろう。
ただし、信念はぶれなかった。昇進後も部屋では若い衆と同じ時刻に稽古を始め、四股、すり足など基礎を重視する。「この部屋に入り、身になってこの番付になった。これは変わらずやっていく」。稽古に遅れて入る普通の横綱とは異なる。
二所ノ関親方は「まだ50%」と弟子の現状を語る。そして「基礎がない時に立派な建物を造っても、何かが起きたら倒れる。人間の体もそう。基礎を固めてから技術がつくと伸び方が変わる。まだ入って2年。これから何年もやると、ものすごい安定感が出てくる」と、その意図を説明した。
現状は基礎固めの時期に横綱になった。過去2年は不本意な結果で「名古屋でいい成績なら自信になる」という目標も、単純な成長への意欲だ。令和の大横綱への第一歩。「15日たったら分かるのでは。土俵入りを含めて、しっかり集中する」と表情を引き締めた。
◆今場所、大の里にかかる記録
▽新横綱場所で優勝なら 年6場所制が定着した1958年以降では大鵬、隆の里、貴乃花、稀勢の里、照ノ富士に続く6人目。
▽大関時代から3場所連続優勝なら 年6場所制が定着した1958年以降では大鵬、貴乃花に続き3人目。
▽3場所連続優勝なら 2014年秋場所の白鵬以来。日本出身力士では1996年名古屋場所の貴乃花以来。
▽本場所新会場で優勝なら 1985年初場所(両国国技館)の千代の富士以来。





