レスリング 石黒隼士パリ五輪2回戦敗退から再出発の3連勝「まだ成長幅がある」あす2連勝でV&世界切符つかむ!明治杯全日本選抜選手権
「レスリング・明治杯全日本選抜選手権」(19日、東京体育館)
非五輪階級を含めた男女計12階級が行われた。総当たりのリーグ戦で実施された男子フリースタイル86キロ級では、昨夏のパリ五輪代表の石黒隼士(25)=自衛隊=が3連勝し、優勝に王手。20日の最終戦で全日本選手権覇者の白井達也(TeamSSP)に勝ち、プレーオフでも勝利すれば世界選手権(9月13~21日、ザグレブ)代表に決まる。
石黒隼は3戦のうち2戦をテクニカルスペリオリティー勝ちで圧勝。ただ5-4の辛勝となった2戦目に悔しさをにじませ、「重点的に強化した組み手を見せたい欲が強くなってしまった。適切な判断ができなかったから厳しい戦いになった」と反省した。
日本勢のメダルラッシュに湧いたパリ五輪。その裏で石黒隼は2回戦で敗退していた。世界トップとの差を痛感し、失意の底に沈んだ。「これ以上強くなれる自信がない」。脳裏には引退がよぎった。
時間が立っても気持ちは揺れていたが、かねて招待されていた米・オハイオ大とミシガン大の練習に1月から参加。初めて大会以外で海外のレスリングに触れ、新たな発見があった。「今までは組み手をベースに戦っていたが、米国はタックル。組み手の戦いは日本の方がレベルは高いけど、重量級のタックルを取ってからの絡みはアメリカの方が高い。自分にはまだ成長幅がある」。伸びしろを見つけ、現役続行の闘志は一気に高まった。
「ハンバーガー2つとか食べちゃった」と、米国の魅力あふれるジャンクフードに舌鼓を打ち過ぎ、一時は体重100キロを超えてしまったが、「新しいことが見せられるかもしれない」とやる気はあふれ、4月からわずか2カ月の短期間で体を仕上げることができた。
「金メダリストのマインドを指導していただける。言葉よりは練習の取り組み方。当たり前のレベルを上げてくれている」と、東京五輪同65キロ級金メダリストで4月に引退を発表した乙黒拓斗コーチの指導も受け、心身共に充実。最高の形で再スタートを切った。
この日は無傷の3連勝を飾り、20日の最終戦を迎える。代表決定プレーオフを含めて白井に2連勝すれば、代表に決まる。「世界選手権で戦えるのかを試したい」。結果次第では、3年後の五輪挑戦も見えてくる。失意のパリ五輪から再起した石黒隼が、成長を確かめるためにまずは世界への挑戦権をつかみにいく。





