豊昇龍「気魄一閃」で2桁優勝目指す 6人目モンゴル出身横綱誕生 叔父・父 元横綱朝青龍「よくやったな」に感激
日本相撲協会は29日、両国国技館で臨時理事会と春場所(3月9日初日、エディオンアリーナ大阪)の番付編成会議を開き、大関豊昇龍(25)=立浪=の横綱昇進を満場一致で決定した。2021年名古屋場所後の照ノ富士以来となる第74代横綱が誕生。モンゴル出身では6人目、令和2人目の横綱となる。昇進伝達式では大関昇進時と同じく「気魄一閃(きはくいっせん)」を用いて、自分らしさを表現。1年ほど疎遠だった叔父で元横綱の朝青龍からの祝福に喜んだ。横綱土俵入りの型は朝青龍と同じ雲竜型を選択。優勝回数2桁を目標に掲げた。
さすがに緊張の色を隠せなかった。夢だった横綱の地位。都内の立浪部屋で行われた昇進伝達式で、使者の境川理事(元小結両国)、大鳴戸親方(元大関出島)から昇進を伝えられ、豊昇龍の表情が引き締まった。
「謹んでお受けいたします。横綱の名を汚さぬよう、気魄一閃の精神で精進いたします。本日は誠にありがとうございました」
大関昇進時と同じ四字を口上に込めた。「大関に上がった時から、その通りに頑張ってきた言葉」と説明。四字熟語ではなく、学生の部活動の応援幕によく使われる熟語が合体した言葉。「自分に何が起きても、何があっても、力強く立ち向かう」と自身と重ねた。
親族間の行き違いから、1年ほど連絡しなかった叔父で元横綱の朝青龍に前日、電話で報告した。「よくやったな。もう横綱なんだから、しっかり考えていきなさい」と言われ「しっかりやっていきます」と応じた。その会話を「もちろんうれしかった」と喜んだ。
優勝25回を誇る朝青龍。豊昇龍は「横綱に上がっても、叔父さんの名前は僕から離れないと思う」と苦笑し「しっかり頑張りたい」と誓った。現在の優勝2回から、10桁到達を目標に掲げた。
93年春場所の曙以来となる新横綱で一人横綱。力量に加え品格も求められるが「品格ってどういう意味ですか」と逆質問する場面もあった。
すかさず師匠の立浪親方(元小結旭豊)は「みんな、叔父さんと似ているからいろいろ言うんですけれど、全然素直でいい人間」とフォロー。「叔父さんは…悪いことはありましたけれど」と苦笑し「尊敬される人間に指導していく。必ずそうなる」と続けた。
注目の土俵入りは雲竜型。「雲竜型でやっていた横綱が一番かっこよかった」と、叔父の姿も思い浮かべて決めた。31日の奉納土俵入り(明治神宮)では朝青龍が緊急来日する予定。関係が修復した叔父に、成長した横綱の姿を披露する。(山本鋼平)
◆豊昇龍智勝(ほうしょうりゅう・ともかつ)本名スガラグチャー・ビャンバスレン。1999年5月22日生まれ、モンゴル・ウランバートル出身の25歳。スポーツ歴は柔道、サッカー、バスケットボール、バレーボール、レスリング。日体大柏高に留学後に相撲を始め、17年全国高校総体個人準優勝。初土俵は18年初場所。19年九州場所新十両。20年秋場所新入幕。23年秋場所新大関。しこ名の由来は師匠・立浪親方の現役時代の旭豊から「豊」をもらい、叔父の朝青龍から「しょうりゅう」をつけ、「しょう」は朝青龍の「青」ではなく、昇進するように「昇」をあてた。好物は肉。愛称はビャンバ。身長188センチ、体重149キロ。得意は右四つ、寄り、投げ。血液型AB。幕内優勝2回、三賞3回(敢闘賞1、技能賞2)。