羽生結弦が舞神V!5年ぶり天下 新フリー「天と地と」で自己新、世界選手権代表決定

 「フィギュアスケート・全日本選手権」(26日、ビッグハット)

 新型コロナウイルス禍のために今季初戦となった羽生結弦(26)=ANA=が前日のショートプログラム(SP)に続いて1位の215・83点をマークし、合計319・36点で5年ぶり5度目の頂点に立った。同じく参考記録ながらスケートアメリカで世界王者のネーサン・チェン(米国)が出した299・15点を超える今季世界最高得点をマーク。日本スケート連盟の選考基準を満たして、世界選手権(2021年3月・ストックホルム)の代表に決まった。

 両手を天へと突き上げたフィニッシュポーズのまま羽生は静止し、その余韻に浸った。「戦い抜けたな」-。その後右手で「1」をアピール。5年ぶりに全日本の頂点へと返り咲いた。「去年、だいぶ悔しかったんで。リベンジできて良かった」。ISU非公認ながら、フリーの自己ベストを2・84点“更新”。“今季世界最高点”をマークした。金メダルとともに、誇らしげな笑顔が輝いた。

 冒頭の4回転ループをはじめ、3種4本の4回転を着氷。中でもサルコーは4・16点の加点を引き出した。表現力を表す演技構成点は10点満点をつけるジャッジが続出。異次元のスコアが並んだ。

 和楽器の軽やかな音色が響く中で表現したのは、戦いの神様と恐れられた上杉謙信を描いた大河ドラマ「天と地と」。最強武将と自身を重ねた。「戦いへの考え方や美学、犠牲があることへの葛藤…。悟りの境地まで行った上杉謙信公の価値観と似ている」。自ら選曲し、編曲もこだわったプログラムで、過去の自分を超えた。

 1年前、GPファイナルでチェン(米国)に、全日本では宇野に敗れた。「自分が成長していないんじゃないかとか、だんだん戦えなくなっているんじゃないかとか、そういう思いがあって。戦うの疲れたなって思ったんです、一瞬」。競技を離れることも考えた。

 コロナ禍での練習でも「どん底」を経験した。一人で練習や振り付けを組み立てる難しさ、周囲の期待、夢の4回転アクセル-。重圧に頭がパンクした。「一人だけ、ただただ暗闇の底に落ちていくような感覚の時期があった」。得意のトリプルアクセルすら跳べなくなった。全てを投げ出したかった。

 その中、かつて演じた「春よ、来い」と「ロシアより愛を込めて」を滑ると、見失いかけていた感情が心に宿った。「やっぱスケート好きだな」。そして「スケートじゃないと自分は全ての感情を出し切ることができないな」。逃げずに戦い抜いたからこそ、頂点に立つ達成感や充実感を再び味わえた。

 全日本の優勝で、21年3月の世界選手権(ストックホルム)代表に内定。コーチ不在の中、自身と向き合い乗り越えた、たくましい羽生結弦が、心のそこからの笑顔で勝利の喜びをかみしめた。

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