柔道GS東京中止に山下泰裕会長“二律背反”の心情「ショック」「ホッとした」
日本オリンピック委員会(JOC)会長で、全日本柔道連盟(全柔連)の山下泰裕会長(63)が24日、都内で取材に応じた。12月の開催を目指していた柔道の国際大会、グランドスラム(GS)東京大会(国立代々木競技場)が新型コロナウイルスへの感染リスクを考慮して中止となったことについて、「ショックだった」と同時に「ホッとした」と“二律背反”の心情があったことを吐露した。
同大会は、新型コロナウイルスの影響で来夏に延期となった東京五輪に向けて、日本における国際大会開催の試金石にもなるはずだったが、主催の国際柔道連盟(IJF)はコロナ禍を鑑みて見送った。18日に山下会長とIJFのビゼール会長が電話会議を行った際、ビゼール会長から「GS東京で万が一何か起こったら(他大会とは)東京五輪への影響があまりにも違う」と進言され、中止の方針を固めたという。
年内の国際大会開催は、来夏の五輪への機運を高める目的もあり「全柔連の中でも(大会開催への)思いが一番強かった」という山下会長。苦渋の中止判断に「最初はショック。残念だった」という一方で、開催に向けては課題も多かっただけに「(ビゼール会長との)電話を切ったらホッとした」と安ど感があったことも明かした。
柔道は選手同士の接触が避けられないコンタクトスポーツであると同時に、GS東京大会には例年約80カ国から参加するだけに運営リスクは低くない。検査体制、移動のための専用車両の確保、宿泊ホテルへの缶詰めなど徹底した感染防止策を準備していたが、IJFとしては「(GS東京で)何かあったら柔道のイメージダウンになる」と集団感染が出た場合のリスクを考慮し、慎重にならざるを得なかったという。
今月からは、日本政府が東京五輪に向けた新型コロナウイルス対策調整会議を始動させ、アスリートの入国条件緩和などを検討するなど来夏に向けて動き出している。試金石ともみられていたGS東京大会の中止判断は、スポーツ界全体としては五輪への機運低下につながることも懸念されるが、山下会長は「大会に向けて準備してきたことは来年の五輪に必ず生きると思う」と強調した。