【記者の目】クラスターいつ発生しても不思議ではない

 日本相撲協会は13日、高田川部屋に所属する西三段目82枚目の勝武士(本名・末武清孝)さんが同日午前0時30分、新型コロナウイルス性肺炎による多臓器不全のため、都内病院で死去したと発表した。28歳だった。協会員の新型コロナウイルス感染による死去は初めて。4月10日に角界初の陽性と判定され、同19日から集中治療室で治療を受けていた。同部屋では師匠の高田川親方(元関脇安芸乃島)らも感染した。国内でのコロナ禍による20代の死亡は初めてとみられ、現役プロスポーツ選手でも初めてと衝撃は大きい。

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 恐れていたことが現実になった。新型コロナウイルスは基礎疾患のある者は重症化しやすいと言われる。力士、親方には持病を持つ者も多く、関係者によれば勝武士も糖尿病だった。集中治療室に入り、良くない状態とは先月末から伝わっていた。高田川部屋の厳しい稽古で鍛えられ、体力十分の28歳力士を死に至らしめる病気に改めて怖さを痛感する。

 同部屋では師匠の高田川親方、十両白鷹山と少なくとも3人が感染。寝食をともにし、家族のように集団生活を送る相撲部屋でクラスター(感染者集団)はいつ発生しても不思議はない。

 ある部屋持ち師匠は「もう1回、気を引き締め直してやるしかない」と角界初の死者に声を震わせた。稽古場の窓を全開にし、換気。弟子の外出は買い出しに限定する。弟子には「体、大丈夫か」「熱を計ったか」と毎日、声をかけている。

 それでも「みんな気を付けている。それでも何があるか分からない。見えないウイルスは一番怖い」と言う。わが子とも言える弟子を守る親方には高田川親方の悲痛が人ごとではない。(デイリースポーツ大相撲キャップ・荒木 司)

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