第５４代横綱輪島、元花籠親方の輪島大士さんが９日に亡くなっていたことが明らかになり、角界を中心に悲しみが広がった。元横綱で解説者の北の富士勝昭氏も、その死を悼んだ。

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　まだ７０歳か。みんな死ぬのが早すぎる。私みたいな者が生き残って。だんだんと寂しくなっていくなあ…。

　初めて会ったのは彼が入門してすぐの春場所だった。うちの宿舎が花籠部屋の近くにあり、輪島に稽古をつけてやってくれと元小結の龍虎さんに言われてね。そしたら、関取衆と稽古をやってるところに出てきた。胸が薄い子が。こんな子がいきなり関取と稽古するのかと思っていたら、左を差してきたもんだから「エーッ」と思ったよ。普通はぶつかっていくところだろう。また強いんだ、それが。見かけによらず。まさか横綱になるとは思わなかったが…。

　私が一番嫌いなタイプだった。左の相四つだったが、半身になって右から絞る。あの肩幅。半身になって左を差して、その肩をグッと押しつけてくる。力が強い。半身になって動かない。北の湖さんも相四つだけど、嫌だったんじゃないかなと思う。

　下手から投げを打つ力士は大成しないと言われていたが、それを破った最初だろう。そういう意味では型破りの横綱だった。優勝１４回。立派なもんですよ。

　面白い男だった。銀座に連れていってくれと言われて、２人で飲みに行ったことがある。でかい車に乗って来ていた。酒は飲むけど弱い。一軒目で吐いちゃって、その車の中でも吐いていた。

　気のいい男で巡業中は支度部屋にのぞきに来ては、しゃべってた。おかしなことばかり言う。トイレのことはＭＣと言う。それはＷＣだろ。ヘアトニックを使ってると、それは顔につけるやつですか、って顔につけちゃう。愛すべき男だった。

　元気なうちにもういっぺん飲みたかった。協会に残っていない元横綱を集めて飲もうという話もあった。やっておけばよかったかなあ。ご冥福をお祈りします。